参議院議員会館 U-25
「プラットフォームU-25」分科会の様子(東京・永田町の参議院議員会館)【撮影=平松けんじ】
※プライバシー保護のため解像度を落としています

 先月28日、東京・永田町の参議院議員会館で中高生・大学生を中心とした25歳までの世代が社会問題を学び、交流し、語り合う場「プラットフォームU-25」が開催された。同集会は朝9時から夕方17時まで開催され、午前中に基調講演や全体講演が行われ、午後には学校教育や主権者教育、ジェンダー、移民の問題などのテーマ別の分科会が行われ、参加者の中高生や大学生らが議論や意見交換を行った。イベントの最後には福島瑞穂参議院議員(社会民主党)と大河原雅子衆議院議員(立憲民主党)が登壇し、参加者の若い世代に対してスピーチをした。

学校教育「おかしいと思ったことについて声を上げていくことが大切」
 学校教育部会では、学校の中の問題について取り上げ、いじめと不登校と校則という3つの話題について話が行われた。同部会ではそれぞれの参加者から生徒の人権を踏みにじるような理不尽な学校の校則や生活指導の事例が報告された。中には「吐いてしまった給食を無理やり食べさせる」指導事例が報告され、参加者を始め、講師も非常に驚いていた。その他にも不登校の問題は生徒個人の責任に帰されがちだが、実際は学校教育の仕組み・あり方自体が生徒一人ひとりにあったものではないのではなかろうかという話が出された。また、いじめの問題については「LINEなど閉ざされた空間の中でその人の尊厳を傷つけていくことでその人を孤立させる行為」と定義付け、その中で孤立している人に共感できる他者であるべきだとの話が出された。最後に参加者たちは子どもの権利条約や憲法における人権を守っていくためには、「学校や職場で自分たちがおかしいと思ったことについて声を上げていくことが大切」であると結論づけ、発表を終えた。

主権者教育「恵まれている環境の人は恵まれていない人に還元」
 主権者教育部会では、他人のことや社会で起きていることを自分のこととして考えられる人を育てていくことが「主権者教育」であると講師から教わったという。同部会では主権者教育に限らず様々な話題を議論したという。参加者で来年度生徒会長に就任する予定の女性は「恵まれている環境の人は恵まれていない人に還元する義務がある」という話に言及し、自らが生徒会長として皆の前で立って伝えていくと決意を語っていた。

国際関係 入管に収容される難民・移民の待遇の悪さ
 国際関係部会では、主に難民・移民の問題が取り上げられた。代表発表した参加者によると、最初に講師のジャーナリストから入国管理局の収容施設の環境の悪さを最初に学習したという。その中で2017年まで入管施設内に医療の手が届かなかったり、常勤医師が不在であったりとか、職員などからのいじめ、宗教的な理由などによる食事の配慮なども十分にされていない現状を知ったという。その上で同部会では難民や移民の問題について討議したという。参加者の中では日本人の中に難民や移民に対する差別意識があるということや、中東のヨルダンでの難民の待遇などについて話が及んだ模様だ。また、代表発表した参加者は、「移民も難民も生産性のために用いられる外国人という偏見を一人一人が改善していく必要がある」と指摘していた。

ジェンダー 女性議員、育休・産休、LGBTQ
 ジェンダー部会では、女性議員が少ない問題、育休・産休の問題、セクシュアリティの問題について議論が行われたという。女性議員の人数が少ない問題では、選挙区が小さければ小さいほど地域的コネクションが重要になってくる選挙の特性上、社会的・経済的コネクションが少ない女性が当選しづらくなるという話が講師からなされたという。クオータ制(議員のうち女性が何%占めるようにと法律で定めている)を採用している国の事例なども共有し、認識を深めたという。

 育休・産休の問題では、参加者たちは女性の人生において「出産」という大きな壁があることに気づき、女性に社会進出に加えて男性の家庭進出も必要なんじゃないか、男性が社会退出をするという選択の自由があっても良いんじゃないかという話が出たそうだ。

 最後に同部会ではセクシュアリティについて討議を行い、LGBTQというセクシャルマイノリティという認識が社会に浸透してきたものの、依然差別や偏見が残っていて周りや家族に打ち明けられないという人がいるという現状認識が共有された。その上でLGBTQの人たちも自然に人生を生きられるようにするためには「セクシュアル・マイノリティーは個性」であるという社会的理解が必要だと結論づけた。

主催者は…「社会問題を自分ごと化して考える場を」
 今回、「プラットフォームU-25」を主催した実行委員会の田中駿介氏(慶應義塾大学法学部)は、同イベントを開催したねらいについて「社会問題を自分ごと化して考える場をつくりたかった」と述べ、イベントを実施した感想について「敷居高いって思われるかもしれないですが、実際そうじゃない。政治の問題は自分たちの問題だと考えてもらえる場になればそれで良かったんじゃないか。」と述べていた。

論評 「嫌なものは嫌」としっかり声をあげて抵抗することが大事
 今回、私は主催者の伊集院氏よりFacebookで招待を受け、学生・若者の主催ということで取材させていただいた。「プラットフォームU-25」では実行委員会の田中氏が言及されたように「政治の問題は自分たちの問題」として中高生や大学生、若者らが活発に議論を交わしていたのが印象的だった。

 私は主に学校教育の問題を取り上げている関係から、学校教育部会に終始張り付いて議論の様子を観察していた。参加者の中高生たちの発言からは学校や教師が一方的に生徒の人権を侵害するような支配的な指導や校則制定を行っている現状が見えてきた。実際に「生活ルール」と称して防寒具の種類や髪型・服装まで事細かに規定する校則が制定されている新宿区立中学校の事例や、元から茶髪でも無理やり黒染めさせられたり、髪の毛が長いという理由で髪を切られたり、教員の不適切な発言に抗議したら暴力を振るわれる事例が存在するなど、学校と教師の生徒の人権に対する意識は非常に低い。

 進学実績等で序列化される現代では学校や教師たちが自分の保身や成績のために「生徒を管理・支配する」という安易な発想に陥りがちだが、日本国憲法や子どもの権利条約では明確に子どもたちの人権が保障されていることを忘れてはならない。「お前は子どもだから」「未成年だから」「高校生だから」と学校や社会では中高生や未成年は抑圧されている。校則しかり、生活指導しかり、アルバイトしかり。このような理不尽な年齢差別は許してはならないし、何人たりとも基本的人権を侵害されるべきではない。

 部会の講師が「憲法は使わなければ腐る」という発言をしていたが、おっしゃる通りだ。私達自身が自分の人権、他者の人権について日頃から学び、おかしいものにはおかしいと声を上げ続けることが非常に大切だ。声を上げなければ権力という巨大ブルドーザーに轢き潰されるだけ。今、私達にできることは、自分、そして隣人の人権を守るために、理不尽なものには声を上げ続けることだ。

(取材・文=本紙編集長・平松けんじ)

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