北園 頭髪検査 20190408
8日、始業式後に生徒たちの髪の色をチェックする教諭ら(撮影・提供=同校生徒、本紙加工)

 「自由の北園」として有名な都立名門校・東京都立北園高校で、8日、始業式後に同校生活指導部の4名の教諭が頭髪検査を行い、明るい髪色の生徒に対して指導を行ったことがわかった(=写真=)。同校の久保剛副校長が認めた。

   久保副校長によると、生活指導部の教員は「授業を受けるという意味では行き過ぎている色になっている」という指導を行ったという。

  同校の生徒たちは、同校が「自由の北園」と呼ばれ、これまで生徒の自由が広範に認められてきた経緯から今回の頭髪検査や染髪規制について強く反発している。



髪染め禁止の校則はないものの…
 通常こういった頭髪の検査や指導を行う学校には頭髪に関して規制や禁止事項を盛り込んだ明文化された校則が存在するが、都立北園高校ではそういったものは存在しないという。

 久保副校長は、頭髪に関して明文化された校則がないことを認めつつ、「高校生らしさ」という言葉に言及し、金髪等の髪を染めた状態で授業を受けることに否定的な見解を示した。その上で久保副校長は今回の頭髪検査について、「授業を受ける上でのマナーや姿勢という意味で明らかに髪色を明るく染めている生徒に注意喚起という意味でやっている」と説明していた。

2018年度から染髪規制を強化か
 これまで北園高校では「自由の北園」の名の下、生徒の髪色など広範な自由が認められていたという。ある生徒が2011年に同校を卒業した人物から聞いた話では、当時は普段の授業時から髪の毛が赤青黄で、教室がまるで信号機のようだったといい、数年前までは頭髪の規制は緩かったという。

 しかし、2018年度以降に入学した生徒に対しては、学校側が髪を染めることを厳しく取り締まるようになったという。実際、管理職や生活指導部の教員が、生徒たちに対して「自分たちで髪色などについて守れないようであればルール化する」という趣旨の発言を行っていたという。

 これら髪染めに関しての指導を強化している意図や狙いについて、久保副校長は2年前に生徒が授業を欠席して髪を染めていたという事例を挙げて、「髪染めではなく、授業を集中して受けて欲しいというのが一番の狙い」と説明していた。

 この2年前の事例について、本紙の取材に応じた生徒たちは過去にそういった事例が存在したことを認識していたが、生徒が髪染めに夢中になり授業をおろそかにしているという学校側の認識に軒並み否定的な見解を示しており、2年前の事例以後同様のことは起きていないと話していた。

 ある生徒は自身の主観であると断りつつ、「千人も生徒がいれば、少しはルール守れない人がいるのは仕方ないのかな…と思ってます。あくまでもそういう人は少数派なので、個別指導で良いのではないかと思ってます。」とコメントしており、全校的に規制を強化する方針に異を唱えていた。

生徒会役員も学校の方針に異議か
 生徒たちによると、学校側の一連の頭髪に関する指導・規制強化に関して、生徒のなかにも反対の意見が多いといい、昨年の生徒会役員の演説でも暗に規制強化の流れを批判する趣旨の発言があったという。久保副校長はこの生徒会役員の発言について「受け取り方によってはそれを指して言っているのかなというのはありましたが、それはそのままダイレクトに発言していたというようなのはなかった」と説明していた。

 また、昨年生徒会が学校側と交渉して文化祭期間中は髪を染めることを事実上認めさせる妥協を引き出したものの、生徒会内部でも「先生の言っていることだから仕方がない」という諦めの態度をとっている役員が多くなっているという。

生徒たちの反発の声
 今回の頭髪検査を含めた北園高校における髪染め規制に関して生徒たちからは次のような反発の声が相次いでいる。

「自由とは名ばかりで入学して損した。詐欺と言ってもいい。」
「今まで許されていた頭髪に関する自由が何の説明もなく、一方的に奪われている現状を考えると『自由の北園』ではない。」
「進学実績が下がって校則が導入された上野高校と違って偏差値や進学実績は年々上がっているのに、規制を強める運営体制にほとんどの生徒が不満を持っている。」
「多様な価値観をお互い認め合う社会において、教員個人の高校生らしい姿像を一方的に全生徒に押し付ける生活指導方法は時代に逆行する動きだと思う。」

生徒たちの声に対する学校側の受け止めは

 生徒たちからの相次ぐ反発の声に対し、久保副校長は次のように学校側としての受け止めを語った。

 「普段の授業などで節度を持ってやってるという風な考えの生徒は多くいるのは確かだが、実際先ほど申し上げた通りそのこと(=髪色)が主になってしまって授業がおざなりになっている子がいるのは事実です。そういうことについては授業第一ってことを考えたときには適切な高校生の行動としてはどうかと思ってますので、目をつけて今後も指導をしていきたいと思います。まあそうはいっても今の生徒たち、三年生や二年生は途中から(指導が)入ってきているところはありますので、よく話は聞きながら指導をしていきたいと思ってます。」

(取材・文=本紙編集長・平松けんじ)


論評 「自由の北園」殺すか生かすかは生徒次第 
 「自由の北園」と呼ばれ、生徒の髪色など広範な自由が認められてきた都立北園高校で規制強化の動きが進んでいる。生徒たちは強く反発しているものの、一部では「先生たちが決めたことだから仕方がない」と諦めてしまっている人もいると聞く。しかしそこで諦めてしまっては北薗高校の自由は死に絶えていくことだろう。それは未来の北園生にとって本当に良いものなのだろうか。

 日本国憲法の第12条前段に「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」という条文があるが、これはどのレベルのコミュニティにも言えることだ。学校においても全く同じで、自分たちが享受している自由が奪われかけているとき、立ち上がって闘わなければそれは保持できないのだ―諦めて闘いを放棄した瞬間、権力機構に個人の権利はあっという間に奪われるだろう。

 今、北園高校は岐路に立っている。「自由の北園」を取り戻すか、管理教育という新しい校風を受け入れるか。その分水嶺だ。生徒の皆さん、ここで「あと◯年で卒業だから」「先生たちが決めたことだから仕方がない」と諦めて自ら権利を放棄するのか、それとも自由を守るために立ち上がるのか、貴方たちの選択が未来に「自由の北園」を伝えていくかどうかを決めることになる。


 話は変わるが、今、同じ都立高校で「自由な校風」を守るための闘いが行われている。校内新聞への検閲・削除から始まった一連の闘いは今年で2年。

 同校ではこれまで授業への出席・遅刻・欠席、部活動や行事への加入・出席は生徒個人の自己管理に委ねられてきた。しかし同校は学校経営計画でこれらについて改めるような方針を打ち出し、不登校や高校中退生を受け入れる従来の校風に反するような計画を打ち出した。そして校内新聞の編集長を恫喝したり、授業に参加させないなどの弾圧を加えた。

 しかしこの自由とは全く言えない状況で、校内新聞の編集長の生徒は自ら立ち上がり、「自由と人権を守るため」闘うことを決意した。彼は生活指導部の管理・支配下にある既存の生徒会では自由と人権を守れないと判断し、「自治委員会」を設立した。

 彼はこのかた2年、学校側と徹底抗戦の姿勢を貫き、闘い続けている。学校側が進める校風の転換は彼の闘いによって相当挫かれていると言えよう。実際、「自治委員会」成立後、校内新聞電子版への検閲などは一切なくなったという。

 結局のところ、自由は闘ってこそ守られるのだ。

(文=平松けんじ)