USB資料写真
資料写真・USBメモリが挿されたパソコン(撮影・加工=平松けんじ)

 今月6日未明、茨城県立鹿島高校の教員が自宅に持ち帰っていた生徒の個人情報データが含まれるUSBメモリを盗難されたことがわかった。20日、本紙のメールに茨城県教育委員会が回答した。

 盗難されたUSBメモリは教員の私物だといい、同校生徒832名の氏名・住所・電話番号・保護者氏名が含まれていたという。


教員が私用USBにデータを保存し、持ち帰る
 茨城県教委高校教育課によると、県立鹿島高校の教員は今月4日、職員室の業務用パソコンを使用して生徒名簿を作成していたが、名簿の作成が終わらなかったため、自身が所有する私用USBメモリに生徒名簿のデータを保存し、自宅に持ち帰ったという。

 その後、6日未明、就寝中に教員の自宅に泥棒が侵入。USBメモリが入っていたバッグが盗まれたという。

現時点で被害の報告はないものの・・・
 茨城県教委によると、20日現在、USBメモリ紛失による被害の報告はないという。

 県立鹿島高校は、今回の事態を受けて7日の職員朝会で全職員に対して、校長から事故の概要と個人情報の取り扱いの確認と再発防止に向けて指導が行われたという。

 また、同校は生徒に対しても、個人情報を利用した不審な連絡などがあった場合は、直ちに教員に報告するよう連絡したという。

県教委「極めて遺憾」
 今回の事態について、県教委高校教育課の担当者は「規程を守らず、まして個人情報を紛失するなど、決してあってはならないこととの認識です。極めて遺憾です。」とコメントしている。

 また、県教委は10日に開催した全県立学校副校長・教頭会で再発防止について注意喚起と、情報セキュリティや個人情報管理の徹底を指導したほか、教育長から県立学校すべての所属長に対し、注意喚起する文書を発出した。

(取材・文=本紙編集長・平松けんじ)


論評 持ち帰らないと仕事が終わらないのは異常な労働環境だ
 茨城県立鹿島高校の教員が自分の私物USBに生徒の個人情報を入れて自宅に持ち帰り、運悪く泥棒に盗まれてしまった事件、正直複雑な気持ちだ。もちろん規程を守らずに生徒の個人情報を私物のUSBに入れて持ち出したのはIT社会においては論外オブ論外と言える行為で、厳しく非難されるべきである。生徒の個人情報が悪用された場合、現在ひいては生徒の将来に影響を及ぼしかねない。しかし、一概に教員ばかりを責めても本質的にこういった事例はなくならないのではないだろうか。

 教員が学校内で仕事を終えられず、自宅に持ち帰って仕事をした結果、生徒の個人情報が流出したりというトラブルが毎年起きている気がする。今回の事例も正直「またか」というのが本音である。この問題の本質は「教員が自らの仕事を家に持ち帰ってやらなくてはならない」という構造だと私は思う。

 今回、USBを紛失した教員は生徒名簿の作成という与えられた職務を全うするため、帰宅後に生徒名簿の作成をしていたという。本来、仕事というのは出勤から退勤までの間に仕事場で終わらせるべきものである。したがって家に持ち帰って残業しなければならないというのはとても不可思議である。

 そもそも生徒名簿作成のような事務作業を何故教員がやっているのか。事務室にやらせれば良いじゃないか。教員は本来、生徒に教科教育を行うのが本業だろう。名簿の作成のような事務作業を何故やらされているのか。教員界の常識に疎い私からすると意味不明の極みである。

 教育委員会にしろ文部科学省にしろ、再発防止再発防止と唱えるならば、日本の学校教育現場の疲弊した実態、構造的な問題をどうにかすべきではないか。教員の働き方改革が近年話題になる中で、公立学校教職員の残業代を支払わないことを定めた給特法や、時間外労働を強いられる教員の実態が明らかになってきている。これまで慣例(というか教員たちの熱意と善意)でメチャクチャな労務管理がまかり通ってきたわけだが、こういったことはもういい加減にやめるべきだろう。

 実際、教員の過酷な労働環境が知られるにつれ、教員不足が顕著になってきているという。その結果、自習をさせられたり、子どもたちの教育を受ける権利が十分に行使できなくなってきている。教員が疲弊することで被害を受けるのは生徒であり、子どもたちだ。本当に「子どものことが大事」と思うなら教員を疲弊させるような労務管理は直ちにやめるべきだ。

(文=平松けんじ)