Reported by 石川遥樹 記者
 岐阜市教育委員会は、新年度から市立の全小中学校、特別支援学校、市立岐阜商業高校に「いじめ対策監」と称するいじめ対策を担当する教員を配置する方針を決定した。



 市教委学校指導課の担当者によると、いじめ対策監の主な仕事は、いじめを未然に防ぐことや、いじめを早期に発見し対応すること。具体的な業務内容は、校内巡回による児童・生徒の見守り、教職員からの情報収集、学校生活アンケートの実施や分析、いじめ防止基本方針の教職員への周知徹底、いじめに適切に対応できているかの確認と改善の指導を行うことなどを想定しているという。また、いじめやいじめと疑われる事案を把握した場合には、関係児童・生徒からの聴き取りや指導、保護者への連絡、関係機関との連絡調整、指導後の見届けなどを行うことを想定しているようだ。

  いじめ対策監には各学校の教員の中から生徒指導に長け、いじめ事案への対処経験が豊富な教員を選んで配置する計画。市教委はいじめ対策監が業務に集中できるよう、各学校へ常勤講師を募集・配置し、いじめ対策監が担っていた授業などを代わって受け持たせるという。

  市教委がいじめ対策監の配置を決定したのは、市立長良川中学校で3年生の男子生徒がいじめを苦に自殺したことがきっかけ。市教委は、いじめ問題対策委員会による指摘と再発防止の提言を踏まえ、学校内でいじめ対策をより組織的に対応できるようにする観点からいじめ対策監の配置を決定した。

  なお、教育現場ではいじめ以外にも体罰等のトラブル事案が後を絶たないが、学校指導課の担当者は、「いじめ以外のトラブル事案へ対応するため、専門の教職員を新たに配置する考えは現在のところない」とのことだった。

大津市では2013年から導入 いじめ対策監の参考にも
 大津市では既に、2013年から「いじめ対策担当教員」と称する同様の制度が実施されている。岐阜市の「いじめ対策監」制度はこれを参考にしたものだ。

 大津市では2011年、市立皇子山中学校の2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺した事件があり、この対応を巡って市の教育行政が批判を受けた。同市ではこの反省から2013年に「大津市子どものいじめの防止に関する条例」を施行し、いじめ対策担当教員を市内の全小中学校に配置している。いじめ対策担当教員の業務内容は岐阜市のいじめ対策監と同様にいじめの未然の防止や、早期発見・対応が主なものとなっている。

 いじめ対策担当教員の導入はいじめの防止の役に立ったのか。市教委児童生徒支援課の熊田氏はこれの成果について、いじめの疑いが生じた際に上げられる「いじめの疑い報告書」の件数が年々増えてきていることや、これまで担任が1人で対応してきたいじめ事案について、いじめ対策担当教員が情報共有や連絡・調整を行い、管理職や他の学年の教員などとも連携した組織的な対応ができるようになっていることなどを挙げた。

 さらに同氏はいじめ対策担当教員について「全国的な取り組みになっていったらいいなと思う」とも話し、「文部科学省の方にも、各学校にいじめ対策担当教員が必要であるということを伝えている」と話していた。

 また、同氏は、岐阜市でいじめ対策監が設置されることについて「岐阜市さんの方でも重大事態を受けて、いじめ対策担当教員を導入されたと思うので、他の市町村にも広がっていけばいいと思う」とこの制度の広がりを歓迎する一方で、「いじめ対策担当教員を配置するために講師を配置しているので、市としての経済的負担は結構大きい。2018年度の例で言うと、講師の配置に2億5000万円程度人件費がかかっている」と市側の財政負担を憂慮していた。

第三者的・中立的な組織が対応すべきではないか
 今回、岐阜市教委をはじめ、神戸市教委などでもいじめ対策担当職員を市教委内に設置する例が増えてきているが、本当にそれで問題解決につながるのだろうか。毎年毎年教育委員会や学校教職員の対応の拙さから重大事案が放置・隠蔽されるなどの報道がなされている。本質的には教育委員会や学校教職員が内々で処理しようとすることががいじめの隠蔽や放置を招いている部分があると言えるのではないか。教育委員会や学校教職員がいじめに対応していくというのは第三者性・中立性という点で疑問が残る。大阪・寝屋川市のように教育委員会ではなく、市長部局が対応していく新たな仕組みづくりが必要だと思うこの頃である。

(石川遥樹)