Reported by 平松けんじ
Kagawaprefassembly
画像・香川県議会議事堂(※Wikimedia Commons「Kagawaprefassembly.JPG」より(投稿者:Waei氏))
 香川県議会は18日、18歳未満の子どものインターネットやゲームの使用時間等について家庭内で守るルールの目安を定め、保護者や事業者に努力義務を課す「ネット・ゲーム依存症対策条例」を賛成多数で可決した。条例は4月1日施行。


 条例では保護者に対し、検閲ソフト(フィルタリングソフト)の利用などで子どものネット・ゲーム利用を適切に管理すること(第6条第3項)、家庭内でスマートフォンの使用やゲームの利用についてルール作りを行い、ルールを子どもに遵守させるよう求めている(第18条第1項・第3項)。また、条例は家庭内でのルール作りの目安として、子どものコンピューターゲームの利用時間を1日60分(休日90分)を上限とすること(第18条第2項)や、子どものスマートフォンの使用を中学生以下は21時まで(高校生などは22時まで)にやめさせること(第18条第2項)を定めている。

 このほか、条例ではインターネットで閲覧・視聴できるサービスを提供している事業者やコンピューターゲームを提供している事業者に対し、「県又は市町が実施する県民のネット・ゲーム依存症対策に協力」するよう求め(第11条第1項)、具体的に「著しく性的感情を刺激」するものや、「粗暴性を助長」するもの、「射幸性が高いオンラインゲームの課金システム」などについて「自主的な規制」を求めている(第11条第2項)。

 条例には罰則はなく、努力義務となっているが、当初の条例案では第18条の項目名で明確に「子どものスマートフォンの使用等の制限」と記していた。事業者に対しては成立した条例の条文でも「自主的規制」という文言が入っており、保護者や事業者に対する強いプレッシャーとなってしまうことは否定できない。県議会事務局政務調査課・川上氏は、「こちらの言葉足らずで誤解があった。基準という言葉にしても規制だという声があったので、そこは制限という言葉を変えたり、ルールでこちらからお願いするということで明記をした」と説明し、18日に実際に可決された条例では表現を弱める修正を行ったことを明かしている。

中高生から批判の声 一部県議も反対
 条例によりインターネットやスマートフォン、ゲームの利用に制限をかけられる側の中高生たちからは強い反発の声が上がっている。本紙の取材に応じた、高松市在住の中学生は「ゲーム時間(つまり趣味に割く時間)を行政が決めるべきではない」「パチンコは規制しないのになぜ子どもだけの規制なのか」と批判している。また、この中学生は条例案の問題点として「WHOが規定するゲーム障害と香川県の定義するゲーム依存性の定義が違うのでまず同じものですらないのに同じもののように扱っている(印象操作) 」「(条例案)第11条に規定される事業者の定義が曖昧」「香川県はヤドン(ポケモンのキャラ)とコラボしている(のにゲームを規制する)という矛盾」と指摘している。

 条例検討委員会に所属している秋山時貞県議(共産)は「ゲーム障害だとかネットゲーム依存の問題が社会問題になっているというのは当然ある」としつつも、スマートフォンなどの使用に時間制限を課す条例案のあり方について「かなり個人の領域に踏み込んだものなので慎重であるべき」「条例に適さないのではないか」と指摘。秋山県議は条例案に保護者が第一義的に責任を負うと記されていることに関し、「条例に書き込むものではないかな」との見解を示した。
香川県条例採決結果
 条例案の採決は18日の県議会本会議で行われ、賛成22(自民党県政会・公明党議員会・無所属)、反対10(共産党県議団・自民党議員会)、棄権8(リベラル香川)で可決・成立した。条例制定を主導した大山一郎県議会議長ら「自民党県政会」とは異なり、「自民党議員会」は反対に回った。同じ自民党所属でも会派によって賛成と反対が明確に分かれた形だ。

異常に多いパブリックコメント件数
香川県パブリックコメント件数比較表
表=ネット・ゲーム依存症対策条例のパブコメ件数と過去のパブコメ件数(取材をもとに本紙作成)
 香川県議会は1月23日から2月6日にかけてパブリックコメントを行い、県民や事業者などから意見を募集した。県議会事務局政務調査課・川上氏によると、県内の個人から寄せられた意見の総数は2613件(うち賛成2268・反対333・その他提言等12)、県内の団体が2件(賛成1・反対1)、全国の事業者が71件(賛成0・反対67・提言4)だという。

 一見、賛成意見が多いように見えるが、今回のパブリックコメントには大きな疑念がある。実はこれまでの県議会が実施したパブリックコメントの件数に比べると、今回のパブリックコメントの件数は異常に多いのだ。2017年度に実施された「香川県県産木材の共有および利用の推進に関する条例」は件数はわずか2件、2014年度に実施された「子育て県かがわ少子化対策推進条例」はわずか5件しか意見が来ていない。2017年度のパブリックコメントと比べると今回の条例案に関するパブリックコメントの件数は1000倍だ。これを異常と言わずとして何というのか。

 また、今回のパブリックコメント募集期間は過去の2件のパブリックコメントに比べて圧倒的に短いのも特徴。2017年度のパブリックコメントは10月12日~11月13日とほぼ1か月間の募集期間、2014年度のパブリックコメントは1月13日~1月30日と半月間の募集期間が確保されている。一方で今回のパブリックコメントは募集期間が1月23日~2月6日と2週間程度しかない。県議会事務局政務調査課の長尾氏は本紙の取材に対し、「当初1月10日の検討委で素案が決まった後に実施する予定だったが、そこで素案が決まらなかったので、20日の検討委で修正案を出してパブコメを実施することになった。修正が想定外だったため。急遽修正を入れることになって、結果として短くなっている。」と説明している。しかし、では1か月で僅か5件しか来ないような県議会パブリックコメントに2600件以上も意見が寄せられたのか。何か不透明な力が働いたのではないかとの疑念は深まるばかりだ。

開示されない全意見
 パブリックコメントに寄せられた意見の概要は採決前日の17日に県議会のホームページで公開された。しかし検討委員に対して17日時点ですべての意見は開示されていないという。秋山県議ら共産党県議団と自民党議員会(大山議長らが属する「自民党県政会」とは別会派)は、条例検討委員会に対し、パブリックコメントのすべての意見を開示するよう求めていたが、検討委員会は「①開示は"検討委員のみ" ②18日13時〜19日17時の期間限定③メモや口外はダメ」という回答を出してきたという(秋山県議のTwitter)。秋山県議はこの点について「内容に愕然」「これでは公開と言えません」と批判している。

 また本会議終了後である18日13時~19日17時の期間限定で公開するというのは、採決に臨む県議たちに採決のために必要な情報提供を怠っていると言わざるを得ず、もはやパブリックコメントを行った意味すらかなぐり捨てていると言える。

検討委議事録は「公文書として存在しない」
 また、条例検討委員会は完全非公開で行われ、公表できる議事録が存在しないのだという。県議会事務局の担当者は本紙の取材に対し、次の通り答えている。
ーー香川県議会ネット・ゲーム依存症対策に関する条例検討委員会に関し、これまでの議事録などはございますか?
県議会事務局「こちらは公表できる議事録を作成していない」
ーーそれは公文書として作成していない、存在しないということですか?
県議会事務局「そういうこと」
ーー会議自体は開かれているけど議事録を作っていないということなんですね?
県議会事務局「はい、そうです」
ーーそういうのは議会の運営の在り方としてちょっと如何なものかというように思うんですけれども、香川県議会としてはそういう運営でやってらっしゃるということですね?
県議会事務局「はい」
ーーそれは、議会の運営の条例とかあるじゃないですか。規則というか、議事運営に際して。そういうものに違反しないんですか?
県議会事務局「そのあたりの話になるとお答えしかねる。」
 仮にも「議会」であるならば秘密会であったとしても議事録は作成すべきであり、それをそもそも「公文書として存在しない」などと言い切れる香川県議会の議事運営の在り方は大いに問題ではなかろうか。審議を非公開にし、議事録も残さず、内容も開示せず、条文も開示しない、こんな非民主主義的な議会運営のあり方が許されるのか。