Reported by YAMABUKI JOURNAL編集局
※この記事はYAMABUKI JOURNAL編集局が執筆したものを本紙が配信しています(論評除く)。
新宿山吹高校 外観
東京・新宿区の都立新宿山吹高校
 2017年以来、自治委員会と学校の間で2年以上紛争が続いている都立新宿山吹高校で、6日、今月就任したばかりの永浜裕之校長と、新宿山吹高校自治委員会の磯田航太郎自治長が会談した。会談は磯田自治長が今月就任した永浜校長への祝意を直接伝える形で行われた。会談は終始和やかな友好ムードで進んだ。

 磯田自治長は祝意文の中で自治委員会の活動を今後も継続する意向を強く打ち出し、永浜校長に対して「前任校とは大きく勝手が違うとは思うが、不登校生や高校中退者のリスタートの場として設立された本校の存在意義を鑑み、本校の校風ならびに生徒の自由と人権を尊重し、生徒の声に耳を傾ける学校運営を期待したい」と牽制。しかし永浜校長は自身が同校の開校当時(1991年)から9年間教員を務めていた経験を明かし、今後も同校の校風を尊重していく意向を示唆した。

校長「できるところはやっていく」
 その後、磯田自治長は、生徒側の自治組織である自治委員会と協力して生徒の声を反映できるより良い学校づくりをともに進めるよう学校側に協力を呼び掛けた。これに対し、永浜校長は「人、モノ、お金の制約がある」としつつも、「教員目線で見るのと生徒目線で見るのとでは見えないところがあるから(自治委員会から)教えてもらえればできるところはやっていくつもり」と応じるなど、自治委員会を通じて生徒の声を反映する学校運営を目指す意向を示した。

自治委員会も雪解けムード演出
 一連の会談を受け、新宿山吹高校自治委員会は生徒の声が反映される学校づくりを学校側とともに推進していく考えを示し、一気に紛争終結に向けて舵を切った。新宿山吹高校自治委員会は、日本自治委員会に対し学校紛争の終結を報告し、同校での紛争への介入を終了するよう要請した。日本自治委員会は、22日、紛争介入終了を宣言。2年半にわたる高校紛争が自治委員会側の事実上の「勝利」で終わりを迎えようとしている。

論評◇遂に紛争終結へ 都教委と新校長の英断を評価
 東京都立新宿山吹高校(東京・新宿区)で、2017年6月に、同校校内新聞「YAMABUKI JOURNAL」への弾圧を契機に勃発した紛争。2017年12月に生徒の「言論・表現の自由」「意見表明権」を奪還すべく、生徒会に代わる新たな生徒自治組織「自治委員会」が発足。自治委員会は「生徒の自由と人権を守ること」と「学校運営への生徒の参加」を求めて活動し始める。しかし学校側は自治委員会の議長を務めていた生徒に対し、「指導を受けなければ授業に参加させない」措置や、前校長や副校長を含む教職員が3~4名で取り囲み身動きをとれなくする措置などを行った。2年以上にわたる激しい紛争が繰り広げられた。

 前校長ら旧学校経営層は自治委員会を徹底的に排除する政策をとったが、かえって自治委員会側の反発を生み、紛争を激化・長期化させた。その後も学校側は自治委員会の排除を続けたが、2019年9月には自治委員会の全国組織・日本自治委員会が紛争に介入するなど紛争は泥沼化した。

 しかし、ここにきて校長交代と同時に紛争は一気に終結に向かっている。永浜新校長が自治委員会と対話する道を選び、「できることはやっていく」と発言した意味は大きい。同校の校風をよく理解し、生徒の声に耳を傾けるという柔軟な考え方ができる永浜新校長、そして永浜氏を新宿山吹高校校長に任用した東京都教育委員会を高く評価したい。学校側にはまだ紛争が始まった当時の副校長が在任していることなどから予断は許さないが、学校側と生徒側が話し合いを通じて問題解決を図れる状況が生まれたことについては大幅前進と言えるだろう。
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