Reported by 平松けんじ 大須賀太一
 ベネッセとソフトバンクの合弁会社「Classi株式会社」が運営しているインターネット学習サービス「Classi」が不正アクセスを受け、ID、パスワードを暗号化した文字列など約122万人分の情報が第三者に不正に閲覧された疑いがあることが、13日、わかった。同社がホームページ上で発表した。

 同社のホームページによると、5日(日)夕刻に「予期しない事象」が発生し、サービスを緊急停止したのだという。同社はこれを受け、不正アクセスの疑いを含めた調査を行ったという。不審なファイルや通信ログを解析した結果、外部から不正アクセスが行われたことが判明。不正アクセスは5日14時5分~同日16時19分の2時間14分の間行われ、「Classiを利用するためのID」「パスワードが暗号化された文字列」それぞれ約122万人分、教員の公開用自己紹介文2031件が外部の第三者に閲覧された疑いがあるという。同社は「不正アクセスは遮断されており、必要な対応は完了しております」としつつも、ユーザーにパスワードの変更を呼びかけている。この事態を受け、同社は生徒・保護者向けの問い合わせ窓口を開設し、説明に当たるという。

運営会社「ホームページ参照して」
Classi社からの回答
画像・本紙編集局に届いたClassi社からの回答メール

 本紙は、生徒や保護者への補償・謝罪などの今後の対応や、「パスワードが暗号化された文字列」からパスワードが解読されるといったことは絶対にないのか、具体的な再発防止策の内容などについて、Classi株式会社にメールで取材を申し込んだ。しかし同社からの回答は「当社よりお伝えできることは、Classiホームページに掲載しておりますのでそちらをご参照ください。」「セキュリティ上の詳細やサービスの運用に関する個別状況はセキュリティ管理上、および事業機密に関わりますので、回答は差し控える」(=画像=)というもののみだった。現在も同社のホームページ上には生徒や保護者への補償という文字は一文字たりとも記されていない。

ベネッセ系列企業の情報流出は2回目
 ベネッセ系列企業で情報流出が発生したのは今回で2回目。2014年にベネッセの3504万人分の顧客情報が派遣社員によって漏洩する事件が発生している。中学校や高校など公教育の一部を担うツールとして利用されている「Classi」。一民間サービスとは言え、公教育に関する事業を受注していた以上、その責任は重大だ。そして、そもそも民間企業にICT化を丸投げしてしまう教育委員会や公立学校の姿勢にも問題があるのではないか。

梶山弘志・萩生田光一両大臣
(左)梶山経産相(24日 霞が関の経済産業省=大須賀太一撮影)、(右)萩生田文科相(17日 同・文部科学省=平松けんじ撮影)

 この件に関して、梶山弘志経済産業大臣は、24日の会見で本紙記者の質問に答え、「教育産業を所管する立場から同社に対して経緯や対応に関するヒアリングを実施をして、今後個人情報保護委員会の指導も踏まえて必要な対策を講じて、再発防止に努めるべき旨、指導を行った」と述べた。また、萩生田光一文部科学大臣も、24日の会見で本紙記者の質問に対し、「新型コロナウイルスによる臨時休業が続く中、家庭においてもオンライン授業を通じた学習などICTを積極的に活用することにより、子供たちの学びを可能な限り保障することは極めて重要」と指摘した上で「ICT活用が進んだ民間企業にも期待するところは多かったところ、今回のような事態が生じたことは大変遺憾」「再発防止を徹底してもらうこととともに、関係者には情報の扱いについてさらに確認して頂きたい」と述べた。

Classi利用校では影響も アクセス障害も発生
 また、「Classi」は4月13日・14日にアクセスができない状況が発生し、全国の「Classi」導入校の生徒の学習活動に影響を及ぼした。Classi社は、ホームページ上で「学校休校などをきっかけとしたアクセスの集中により、システムの不安定な状況が発生」と説明している。同社はこのアクセス障害について「アクセス集中によるものであり、外部からの攻撃やコンピュータウイルスによるものではない」と不正アクセスによるものではないと説明している。

 「Classi」を利用している都立日比谷高校では、4月13日・14日のオンライン授業支援を中止した。同校の穴沢努副校長は「もう二度とないようにしてほしい。パスワードを変えざるを得なかったし、連絡も取れないし、Classiを使えないので指示を出すことすらできない。」と話していた。

 中高生たちからも強い批判の声があがっている。中高生たちはClassiにアクセスすることができないことで、Classiを使って行う課題提出や出欠確認、教員との連絡などに支障をきたしているという。ある高校生は「宿題は見れないし、知らない間に課題が追加されていたりします。連絡は全てClassiなので早く直してほしい。」と困惑を隠さない。また、ある都立高校生は「強制的に加入させられている、不具合と不信感が強いClassiの利用を停止し、まともな代替サービスに移行していただきたい」という理由で「Classi」の利用中止を求める署名活動を始めた。

 Classi社はホームページ上で「当面の間、23時から翌6時までサービスを停止する」と表明。夜間にメンテナンス作業を行うという。

無償供与を受けられる都立高校と受けられない都立高校の差とは
 このほか、今回、本紙の取材で、都立日比谷高校が新型コロナウイルスの感染が発生する以前から「Classi」の無償供与を受けている可能性が新たにわかった。同校の穴沢副校長があっさり認めた。穴沢副校長によると、日比谷高校で使用している「Classi」は機能が限定されているものだという。

 Classi社側は日比谷高校への「Classi」の無償供与の有無に関する質問に回答していないが、本紙記者が取材した際、同社広報がこの件について「どこで聞いたのか」と情報源を聞き出そうとしてきた。

 一方で、都立小松川高校では勝嶋憲子校長名で保護者から「Classi」利用料として年3940円を徴収することを通知している。どうやら都立小松川高校では有料のようだ。同じ都立高校なのに「Classi」利用料に差が出ているのはなぜなのか。今後とも調べていきたいと思う。
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