平松けんじ

 萩生田光一文部科学大臣は、16日に開かれた参議院文教科学委員会で「人権、人格を否定するような校則というものは望ましいものではない」と述べた。一方で「積極的校則改正をするように文部科学大臣通知みたいなですね、そういうのはちょっとやっぱりなじまない」とも述べ、文部科学省主導での校則の見直しの推進には消極的な見解を示した。吉良よし子議員(共産党)の質問に答えた。


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 吉良議員は冒頭、日本テレビの情報番組「スッキリ」の報道に言及。同番組では小学校で体育の授業の際に児童が肌着を着用することが禁止されていて、男性教師が女子児童の胸の成長をチェックして許可を出せば着用が認められる事例などが報じられている。吉良議員は「あまりにひどい」と述べたほか、議場の女性議員からも「えー」という驚きの声が上がった。このような指導について問われた萩生田文科相は「首をかしげる」と述べた。


 吉良議員は、同党の調査で都立高校全日制177校のうち、頭髪に関する規定がある学校が150校(84.7%)にのぼっていることを指摘。さらに全日制の都立高校の45%でいわゆる「地毛証明書」の提出が求められているとの実態を指摘し、このような校則について「差別、人権侵害」「国際化、多様化の時代に黒髪ストレート以外は排除するというようなことはあってはならないんじゃないか」と批判した。


 また、吉良議員は、共産党千葉県議団の調査で県立高校105校で黒染め指導が行われ、違反した生徒にその場で髪に黒染めスプレーを噴霧した指導をしていた学校が25校もあったと指摘。指導対象となった生徒は210人だという。吉良議員によると、ある女子高校生は教師4人に取り囲まれて黒スプレーを噴霧される指導を受けて、登校できなくなったという。


昨年度、校則原因の不登校は5572人

 これらを踏まえ、小中高の不登校児童生徒のうち、校則や学校の決まりで不登校になった事例の数を問うた吉良氏。答弁に立った瀧本寛・文部科学省初等中等教育局長は、「令和元年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題の調査」で校則や学校の決まりなどが不登校の主たる要因または主たる要因ではないものの一因だった児童生徒が5572人にのぼったことを明らかにした。


 不登校になるように精神的に追いつめるような指導の是非について問われた萩生田文科相は、体罰や不適切な言動にあたらなくても「児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく厳しい指導を行うことは児童生徒の自尊感情の低下などを招き、児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねない」と指摘。「個々の児童生徒の特性や発達の段階に応じた指導を行うことが必要」と答弁した。


文科相「下着の色を指定、確認あり得ない」

 吉良氏は「合理的な説明ができないようなもの、そして人権侵害につながるようなものは見直さなきゃいけない」と指摘し、全国的な校則の見直しの必要性について萩生田文科相を質した。これに対し、萩生田文科相は、「この校則がいいとか悪いとかってコメントするのはなるべく控えている」としつつも、人権、人格を否定するような校則というのは望ましいものではない」「率直に申し上げて下着の色を指定して、それを確認するというのはちょっとあり得ない」と述べた。さらに「時代の変化や価値観の変化によって、見直しをそれぞれの学校が行っていくことは決して悪いことじゃない」と述べた。


 さらに萩生田氏は校則を学校が予め公開することについて、「入学前に自分が受験をする志望校の校則まで見て、判断することってないと思う。だから入ってみたら理想と違う窮屈な思いがあって、これは自分が考えていた学生生活と違うってこともきっとあると思う」と指摘。「各学校があらかじめ校則を公開しておくというのは受験生が学校を選択する上でも悪いことではない」と肯定した。


文科省主導の校則見直しには否定的

 一方で萩生田氏は「一概に校則を文部科学省が間に入って、変えていいんですよ、どんどん変えていいんですよっていうことよりも自然のそれぞれの現場現場の判断で行うことが望ましい」「積極的校則改正をするように文部科学大臣通知みたいなですね、そういうのはちょっとやっぱりなじまない」と述べ、文部科学省主導での校則の見直しの推進には消極的な見解を示した。


 吉良氏がさらに「何よりもまず校則によって人権侵害をしてはならない、人権侵害の校則は見直しの対象だというべきじゃないか」「学校長の権限で校則決められると言うけれども憲法で保障されるべき基本的人権を校則で侵害して良いというようなことには絶対ならない」と質したが、萩生田文科相は「文科大臣が(校則を)変えろというのはなかなかその建付けとして難しいところもあるのでそこは是非各学校で考えていただきたい」と述べるにとどめた。


設置者・学校に丸投げではなく、文科省がイニシアティブを

 校則の問題は、ISJも文部科学大臣閣議後記者会見で繰り返し質問しているが、「個人的な見解としてどうなのかな」とまでは言ってくれる萩生田大臣。今回は「人権、人格を否定するような校則というのは望ましいものではない」と一歩進んだ答弁だったことは評価したいが、私立の学校の例を出して「建学の精神があるのだろう」みたいなスタンスであくまで触ろうとしないのはいかがなものか。今回の質疑でも文科省がイニシアティブをとって人権侵害の校則・指導を是正する取り組みが示されなかったのは極めて残念だ。下着の色を指定・確認する校則や指導をはじめ、児童生徒の基本的人権を侵害する校則は直ちに全廃されるべきであり、文科省がその責任を放棄したことには強い憤りを感じる。「望ましくない」「あり得ない」のなら「各学校で考えろ」「設置者の方で」と丸投げしないでほしい。そもそも設置者や学校が憲法で保障されているはずの基本的人権を踏みにじる校則や指導を強行している現状がある以上、国として対応すべきだ。何故やらないのか。私立学校の校則の問題にタッチするといわゆる文教族内で政治的なハレーションでも起こるのだろうか。あの財務省相手にあれだけガチンコで交渉できる萩生田大臣なら本気を出せばできるはずだ。改めて人権侵害の校則の是正を強く求める。