練馬区の区立中学校1校で家庭内でのSNSルール作成状況を記したリーフレットの提出を求めた際、学校側がSNSのパスワードの記載が不要との説明を行わず、生徒のSNSのパスワードを学校が入手していたことが、12月3日、わかった。

練馬区では「児童生徒の情報モラル向上と情報端末に係る事故の防止」のために「SNS練馬区ルール・リーフレット」を配布し、家庭内でのSNSルール作成状況を学校に提出させている。このリーフレットには「我が家のSNSルール簡単作成シート」と題されたものが含まれており、「管理方法」の欄にSNSのパスワードを記載する欄が記されている。

練馬区教委では2020年6月からこのリーフレットを配布していて、同年8月にパスワード記載する箇所について、未記載かマスキングした状態で提出するよう各校に通知していた。しかしこの中学校では、11月19日に、12月実施の三者面談に合わせ、家庭内でのSNSルールの提出を求める際、パスワードを未記載かマスキングした状態での提出を求める説明が行われていなかったという。学校側は11月30日に保護者からの連絡でこの事態を把握し、12月3日に各家庭に謝罪文を送付した。

区教委によると、12月2日時点で276名からリーフレットの提出を受けているが、パスワードの漏洩は発生していないという。

練馬区教育委員会の堀和夫教育長は「家庭からの提出を求める際には、パスワードを記入しないよう通知していたが徹底されていなかった。この事態を受け、再発防止策を徹底させ二度と同様のことが起こらないようにしたい。当該校の生徒や保護者、関係のみなさまには大変ご迷惑とご心配をおかけしたことをお詫びしたい。」と謝罪のコメントを発表した。

練馬区教委では今後発行するリーフレットではパスワード記載欄を削除する。

「SNSルール」提出求めることそのものが過干渉
この事態に関し、練馬区立学校の子どもを通わせている保護者は「私的領域への越権行為も甚だしい!」と厳しい批判の声を上げるなど、ネット上では批判の声が相次いだ。

この練馬区のSNSルールは、2020年からスタートした取り組みのようだ。

2019年の区教委の「いじめ問題対策方針」で「『SNS練馬区ルール』を示し、インターネット上のトラブルの未然防止を図る枠組みを整えるとともに、学校および家庭と連携して児童生徒および各家庭の主体的なルールづくりを推進」と記している。その後、区教委は、2020年6月17日付で通知を出し、活用方法の参考例として「SNS練馬区ルール」「SNS学校ルール」を踏まえた上で家庭でのSNSルールをリーフレットに記入するよう児童・生徒に「指示する」ことを示している。また、同通知では児童・生徒に家庭でのSNSルールを提出させ、作成状況を確認することも求めている。

今回問題となったパスワードの取り扱いについては、2020年8月20日付で区教委が各学校にパスワードを記入させない等の対応を通知している。

一方で、同年10月21日の第2回練馬区いじめ等対応支援チーム連絡協議会の議事録によると、「パスワードをここに書いてはパスワードの意味がないのではないか。これを学校が集めるというのは、提出して集めるというのはいかがなものか。」という指摘が区教委に寄せられていたという。区教委側は「実はもうすでに印刷して配付済みなものだから、これを回収してまたつくるというのがなかなか今年度内にはできそうもない」ため、「緊急の対応」として、前述の通知を出したという。しかし、これは2020年度の話だ。2021年度に入ってパスワード記入欄のないものに修正せず、従来のものを配付し続けたのは怠慢ではないか。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック