女児の遺書(平松けんじ撮影)
一昨年11月、町田市立町田第五小学校=五十嵐俊子・校長(当時)=の当時6年生の女子児童が、いじめを訴える遺書を残して自ら命を絶った。女児は学校で「ドッキリ」と称する仲間外れや陰口をされたり、学校が配布したタブレット端末のチャット機能で「うざい」「きもい」「死んで」等の悪口を書き込まれるいじめ被害を受けていた。
ISJは、今年2月、女児が書き残した遺書を町田市への情報公開請求で入手。遺書には同級生に仲間外れにされ、孤独を感じ、自死に追い込まれていく様子が記されていた。
女児は、遺書の中で「主は同じ学校の■ ■のせいだろうね」と記し、自殺の主たる理由が同級生との関係にあることを告白。さらに「お前らの遊び道具じゃねぇ」「ウチの事きらい?」「やっぱ孤独が一番イヤだな。だから死んだの」と記していた。繰り返し「ドッキリ」と称する仲間外れにされ、女児が精神的に苦痛を感じていたことがうかがえる。
遺族は学校の対応を批判
この事件をめぐっては、女児の遺族が昨年9月に文部科学省で記者会見を開き、学校や市教委の対応を批判。当時の町田第五小学校校長・五十嵐俊子氏は、遺族から調査の要望を受けたにもかかわらず、「いじめと自死には因果関係がない」「トラブルは9月に解決済み」と主張し、3月までいじめと自殺の関係を認めなかったという。しかも五十嵐氏が市教委に重大事態として報告したのは、女児の自殺から2か月後の昨年2月だった。さらに五十嵐氏は児童用タブレットのパスワードを統一したり、「タブレット端末でチャット機能を使えることを把握していなかった」(町田市教委)というずさんな管理を行っていた。
こうしたことを踏まえ、文部科学省は都教育委員会と町田市教育委員会担当者を文科省に呼び、指導した。萩生田光一文部科学大臣(当時)は、昨年9月17日の会見で「ちょっとびっくりしたのは、当時、パスワードが、児童全員が同じものを使用していたということ。こうしたパスワードの運用は、文部科学省の『教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』において、平成29年から累次にわたって指導してきている内容で、他人に知られないように取り扱うとされていることに照らしても、不適切と言わざるを得ない。」と批判。また、文科省担当者は、五十嵐氏率いる町田第五小学校が市教委に女児の自死を重大事態として報告したのが遅れたことについて、「その間何をしてたんだ」と指導したことを明らかにしている。
当時の校長は渋谷区教育長に「栄転」
しかし五十嵐校長は、昨年3月末に定年退職後、同4月から渋谷区の教育長に「栄転」した。任命理由について、渋谷区の長谷部健区長は、五十嵐氏のICT教育推進の実績を評価したとしている。
一連の問題への報道が活発化する中で、長谷部区長が、昨年1月時点で女児の自死があったことを知りながら、議会にそのことを報告せず、議案を提出していたことが発覚した。昨年11月26日の区議会一般質問で「れいわ渋谷」の金子快之区議の質問に対し、長谷部区長が認めた。
金子区議は「区長は五十嵐氏の知られざる経歴、つまりいじめ問題への関与、あるいはその当事者であったことを御存じの上で議会に人事案を提案したのか」と質問。これに対し、長谷部区長は「議会に上程した時点で知っていた」と答えた。
さらに長谷部区長はこの際の質疑応答の要旨が掲載された「区議会だより」の内容を差し替えるよう議会側に要求。「議会に報告しなかった」「推定無罪」などを削除しようとした。結局、すでに印刷した14万部を廃棄し、約150万円の追加経費をかけ印刷しなおす事態になった。
渋谷区の長谷部健区長は、1月17日の会見で、女児の遺書を根拠に「必ずしも自死の原因が学校での人間関係によるものではない可能性があり、当時の状況で校長としてとるべき対応はなされており、決していじめを隠ぺいしている事実はないと認識した」と五十嵐教育長を擁護。「五十嵐氏は適任」と強調した。
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