7月10日に投票が行われ、125議席が争われた第26回参議院議員通常選挙で、与党自民党は単独で改選議席の過半数となる63議席を獲得し、大勝した。選挙期間中に安倍晋三元首相が暗殺され、一時選挙運動を中止する陣営が相次いだ異例の選挙となった。
自民・維新が躍進も、公明・国民は議席減 NHK党は…
今回の選挙で議席数を大きく増やしたのは、自由民主党と日本維新の会だ。
自由民主党は、改選前55議席を大きく増やし、63議席を獲得。参議院全体では111議席から119議席に増え、参議院の半数近くを占めた。
日本維新の会は、改選前の6議席を12議席に倍増。参議院全体で15議席から21議席に増える大躍進を遂げた。東京都知事在任時に借入金をめぐる問題でわずか1年で辞職に追い込まれた猪瀬直樹氏の当選が話題となった。その他、元マラソン選手の松野明美氏、歌手の中条きよし氏、元プロ野球選手の青島健太氏といった、タレントやアスリート出身の議員の当選が多かった。

一方、公明党は1議席減って26議席と伸び悩んだ。特に比例代表の得票数は、昨年10月の衆院選から100万票減らし、618万票にとどまった。898万票を獲得した2005年以降、比例得票数は右肩下がりで下落に歯止めがかからない。山口那津男代表は、7月11日、「極めて残念。私の力不足をお詫びしなければならない。」と危機感をあらわにした。
国民民主党は、2議席減って10議席と振るわなかった。山形選挙区から当選した舟山康江氏は、自民・立憲以外の政党からの立候補で唯一、一人選挙区を制した。
NHK党は、暴露系YouTuber・ガーシー氏(本名・東谷義和)が初当選を果たした。ガーシー氏はドバイ在住で、選挙運動での街頭演説はすべてリモートで行っていた。
野党共闘は61議席から55議席に減少
一方、野党共闘はれいわを除いて振るわず、4党合わせて61議席から55議席まで減らした。

最も辛酸を舐めたのは立憲民主党だ。改選前23議席を減らし17議席に。参議院全体では45議席から39議席と6議席も減らすこととなった。3期務めた森裕子氏や白眞勲氏もあえなく落選となった。一方、蓮舫氏は、票を大幅に減らしたものの激戦の東京選挙区を4位で勝ち抜いた。また、昨年の衆院選で維新・池下卓衆議院議員に敗北し、落選した辻元清美前衆議院議員も全国比例で当選し、国政復帰を果たした。

日本共産党は、2議席減らし、11議席となった。
社会民主党は、一時期は政党要件を満たさなくなることを危惧されていたが、福島瑞穂党首が健闘し再選。何とか1議席で首の皮一枚繋がる結果となった。得票率も何とか2%を満たし、ギリギリ政党要件を維持した。
社会民主党は、一時期は政党要件を満たさなくなることを危惧されていたが、福島瑞穂党首が健闘し再選。何とか1議席で首の皮一枚繋がる結果となった。得票率も何とか2%を満たし、ギリギリ政党要件を維持した。
野党共闘勢力の中で唯一躍進したれいわ新選組は、新たに3議席を獲得。党所属国会議員が衆参合わせて8名となった。衆議院議員を辞職し、出馬した山本太郎代表(東京都選挙区)は、維新の海老沢由紀氏に競り勝ち、東京都選挙区最後の6議席目を獲得。比例代表ではお笑い芸人・水道橋博士氏が当選。水道橋氏は、Twitter上で松井一郎大阪市長を批判する動画を取り上げたところ、松井市長が「デマ」として法的措置をとったことをきっかけに、「反スラップ訴訟法案」成立を訴え立候補した。
諸派の一つ「参政党」が議席獲得 国政政党は10党に
今回の選挙で初めて議席を得、晴れて国政デビューとなったのは、2020年3月に結党した「参政党」だ。結党に携わった一人である神谷宗幣氏(44歳)が当選し議席を得、さらには2%以上の得票数を獲得し、政党要件を満たすこととなった。
参政党は、「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」というモットーを掲げており、既存の政党と政治に対抗する理念を打ち出している。政策でいえば全体的に保守的で、重要政策としては「管理教育でテストの点数を競うのではなく、自律的教育で解決能力を身に着ける」「オーガニックな食と医療の推進」「外国資本と外国人労働者の流入抑制」といったことを掲げている。
今回当選した神谷氏は、政界の経験があり、2007年から2012年まで吹田市議会議員を務めた。2012年に衆院選に立候補して落選した後は、保守系ネット番組運営会社「イシキカイカク株式会社」を設立し、現在まで代表取締役を勤めている。
神谷氏は教育政策について、「GHQが作った管理教育・偏差値重視・自虐史観教育を一新し、探求型教育で社会の問題を解決でき、自尊心をもてる人材育成に変えるべき」と訴えている。
今回の参院選に出馬した他の諸派、例えばファーストの会、ごぼうの党、新党くにもり等…は、いずれも議席獲得には至らなかった。
今回の参院選に出馬した他の諸派、例えばファーストの会、ごぼうの党、新党くにもり等…は、いずれも議席獲得には至らなかった。
当選者たちの教育政策、自民党はいろいろ
今回当選を果たした候補者らの中には、教育・子育て政策を重点政策とする者も多い。自民党以外の場合、候補者の政策内容は、党の公約とほぼ同一のものとなっていることがほとんどだが、巨大政党の自民党は、候補者の中でも様々な主張が存在する。そのうちのいくつかを取り上げてみた。
文部科学大臣の末松信介氏は、「GIGAスクール構想」「インクルーシブ教育」を重んじる方針を掲げた。
今回比例で最も多くの票を集めた赤松健氏は、「孤独孤立、不登校、引きこもりの子どもに対し、主にネットを活用して、それぞれの個性に合った教育を実施する」と、学校生活に適応できない子供たちの支援を掲げた。
杉並区長を3期務めた山田宏氏は、国民民主党同様に「こども国債」を発行することと、「第一子100万、第二子200万、第三子以上300万円の出産祝い金」を実施することを掲げた。
外務省官僚上がりの松川るい氏は、「3歳からの幼児教育の義務教育化」を掲げるとともに、立憲民主党に類似して「子ども・若者のための予算と政策を倍増」と掲げた。
保守派の山谷えり子氏は、「小学校に一つずつ美しい和室を作り、授業の中で日本文化の体験機会を作る」と伝統を重んじる政策を掲げた。
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