都庁第一本庁舎02 夕焼け Miyuki Hiramatsu
資料写真・東京都教育委員会が入る都庁第一本庁舎(撮影=Miyuki Hiramatsu)

 東京オリンピックが近づく中、昨年12月、ある都立高校で担任教諭が自らのクラスの生徒にボランティア応募用紙を配布した際、「全員書いて出して」と応募を強制するような発言をしていたことがわかった。昨年12月19日に都立高校生徒がTwitter上でボランティアの応募用紙の写真とともに告発したことで明らかになった。



都教委、事実関係を認める
 都立高校を管理する東京都教育委員会(都教委)指導企画課の北村弥生課長代理は、本紙の取材に対し、「教員がクラスのHRで申込み後に辞退できる旨を伝えつつも、『全員出して』という発言をした」と説明した。この都立高校では都教委が用意した生徒への案内文例に基づいて教員への周知・説明をしたものの、このように「熱意のある」教員からボランティア応募を強制するような発言が出てしまったという。

 そのうえで北村課長代理は「(生徒がSNS上で告発したことを受けて)都教委指導部と当該都立高校校長の間で協議し、ボランティア応募を強制する発言があったクラスについては学校側がもう一度説明機会を作り、参加は自由であり辞退できる旨を伝えた」と説明した。

小池東京都知事も記者会見で言及
 東京都ホームページに掲載されている小池百合子・東京都知事の定例記者会見録によると、小池百合子・東京都知事は昨年12月21日の定例記者会見でTBSの記者からの都市ボランティア応募強制問題に関する質問に対し、「申込みは生徒の自由意思で行われるものでありますし、東京都教育委員会の方からは、ボランティアへの参加を強制するようなことはしていないと聞いております。受け止め方がそう思われたということは残念」と答えていた。

 また小池知事は、都立高校から生徒への呼びかけについて高校が自主的に行っているものなのか、都側が都立高校に要請しているものなのかというTBS記者の質問に対し、「都立の関係の諸機関については、都から都市ボランティアということで呼び掛けをしております。高校だけではございません。」と回答した。この小池知事の発言からは都側が組織的に都立高校など都立の諸機関に対して都市ボランティアの応募呼びかけをしていたことがうかがい知れる。

オリパラ局が応募用紙の各都立学校への送付を要請
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写真・本紙が入手した都教委の公文書(加工=本紙編集局)

 本紙はこれを裏付けるような公文書を入手した。東京都教育委員会がオリンピック・パラリンピック教育推進担当課長名で発出した文書「東京2020大会都市ボランティアの応募期間の延長に伴う再募集について(通知)」(昨年11月26日付)では、校長に対し「対象となる生徒への周知と案内等について、お取り計らい」を求めているほか、裏面には東京都オリンピック・パラリンピック準備局が各都立学校に対して都市ボランティア応募用紙を対象となる全生徒人数分を送付する旨の記載がされている。このほか同文書は「生徒の申込みの簡略化」を目的に都市ボランティア応募用紙の取りまとめを学校で行うよう要請している。

 この文書について都教委指導企画課・北村弥生課長代理は都教委が発出したものと認めた上で、オリンピック・パラリンピック準備局が都立高校に都市ボランティア応募用紙を直接送付した経緯として、オリンピック・パラリンピック準備局から都教委の方に各都立高校・中等教育学校・特別支援学校高等部に対して高校2年生以上の全生徒の人数分の応募用紙約10万枚を直接送付したい旨の連絡があり、都教委がこれを了解して実施に至った、と話している。

 このほか北村課長代理は応募用紙の取りまとめについて、生徒が学校に提出した応募用紙を学校が取りまとめて都教委に提出し、最終的に都教委からオリンピック・パラリンピック準備局に送付するやり方を取ったと説明した。

 また、学校が応募用紙を取りまとめることが組織的に生徒を動員することにつながるのではないかとの記者の質問に対し、北村課長代理は「説明に際しては『希望がある、関心がある生徒に(参加を呼びかける)』という案内をしていて、もちろん動員とか強制という前提ではない」と否定的な見解を示し、文書の通り生徒の申し込みを簡略化させる目的であると強調した。

都教委 大会ボランティアへの生徒参加も検討か
 また、都教委が都市ボランティアだけではなく、大会ボランティアへの生徒の参加についても検討を進めていることが、都教委の公文書「東京2020大会都市ボランティアの応募期間の延長に伴う再募集について(通知)」(昨年11月26日付)で明らかになった。同文書では、「東京2020大会開催年度に、中学校及び高等学校(に相当する学校)に在籍する生徒については、大会関連ボランティアを体験できるように、別途検討中です。」としており、都教委は大会関連ボランティアへの生徒の参加についても検討している模様だ。東京都の公立中高生の「ボランティア」参加プランは当事者である中高生の知らないところで計画されているようだ。

(取材・文=本紙編集長・平松けんじ)

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