昨年、文部科学省が各学校に直接送付した、同省作成の「放射線副読本」(小学生版・中高生版)を、滋賀県野洲市教育委員会が今年3月11日に回収する措置をとっていたことがわかった。野洲市教委と文部科学省初等中等教育局教育課程課が認めた。
野洲市教育委員会によると、副読本を回収した理由は次の3つだという。
①内容が高度で理解が難しい
②被災者の声がしっかり書かれていない
③未だに避難を余儀なくされている方がいるのに安全であるということばかり書かれており、記述のバランスが十分ではない
①内容が高度で理解が難しい
②被災者の声がしっかり書かれていない
③未だに避難を余儀なくされている方がいるのに安全であるということばかり書かれており、記述のバランスが十分ではない
野洲市教委の担当者は、副読本は文部科学省が責任を持って発行したものであるから、副読本に書かれている放射線の科学的安全性について市教委として否定するものではないとしている。
文部科学大臣「とにかく現物をちゃんと読んでいただきたい」
野洲市教委の「放射線副読本」回収について、柴山昌彦文部科学大臣は4月26日の大臣記者会見で次のように所感を述べている。(出典:文部科学省HP)
野洲市教委の「放射線副読本」回収について、柴山昌彦文部科学大臣は4月26日の大臣記者会見で次のように所感を述べている。(出典:文部科学省HP)
昨年10月に改訂した放射線副読本は、平成29年12月に取りまとめられた「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を踏まえるとともに、放射線に関する科学的な知識を理解した上で、原発事故の状況や復興に向けた取組を学ぶ構成とすること、そして何よりも大切なんですけれども、いじめを防止する内容を抜本的に拡充すること、復興に向けた歩みが着実に前進していることを紹介をすることを主なポイントとして改訂したものでありまして、放射線に関する児童生徒の科学的な理解を促す上で有意義な内容となっております。この改訂した放射線副読本には、事故により放出された放射性物質が広範囲に拡散し、被害をもたらしたこと、福島県の子供が実際に体験した話も取り上げて、避難児童生徒へのいじめは決して許されないこと、現在も事故により避難されている方がいること等もちゃんと盛り込まれているところでありまして、事故や被災者の置かれた状況を軽視しているものでは決してありません。今回の改訂は、児童生徒が放射線に関する科学的な知識を身に付け、理解を深めることができるよう、学校の関係者や放射線の専門家等の意見も踏まえて、児童生徒の発達段階に応じて表現も工夫しながら、科学的根拠に基づいて、見直しを行ったと私どもとしては自負をしております。まずとにかく現物をちゃんと読んでいただきたいと我々は強く思います。野洲市教育委員会による放射線副読本の回収の件について、滋賀県教育委員会を通じて確認をしたところ、副読本のより有効な活用方法を考えるために行ったものであるということでありますので、今後、各学校において、今申し上げた改訂の趣旨を踏まえ、是非、積極的に活用していただきたいと考えております。
(取材・文=本紙編集長・平松けんじ)
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