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 香川県議会で検討が進められている「ネット・ゲーム依存症対策条例」(仮称)が波紋をよんでいる。


 条例案は県議会の「ネット・ゲーム依存症対策に関する条例検討委員会」(委員長・大山一郎議長)で検討が進められているもので、10日に同委員会で提示された条例の素案が各方面から批判を浴びた。10日時点の素案では、小中高校生の「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなスマートフォン等の使用」時間を1日60分(学校休業日は1日90分)と制限し、中学生以下には午後9時まで、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめるルールを遵守させるとしていた。
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 この条例に関し、批判の声が上がったこともあり、20日に開かれた同委員会では修正案が提示された。修正案では使用時間制限の対象がスマートフォン等からコンピューターゲームに限定された一方で、夜9時以降(高校生以上は夜10時以降)のスマートフォン等の使用をやめることを遵守させる条文は維持されている。このほか事業者などに対し、「著しく性的感情を刺激」するものや、「粗暴性を助長」するもの、「射幸性が高いオンラインゲームの課金システム」などについて「自主的な規制」を求めており、事実上の表現規制ではないかとの批判が上がっている。

県が屋外の遊び場を確保
 また、ネット上などでは「老人が公園での騒音や球技を禁止して子どもの遊び場を奪っておいて今度はスマホやゲーム禁止かよ」という怨嗟の声も聞かれている。

 この点について実際に20日に示された修正案第4条第4項で県の責務として「市町との連携に より、子どもが安心して活動できる場所を確保」と記されており、一応は子どもたちが屋外で遊べる環境整備に取り組む姿勢が盛り込まれている。

共産県議「今のままでは賛成できない」
 本紙は条例案の検討委員会所属県議を含め、県議会議員に取材を試みたが、大半の県議からは応答すらなかった。検討委員会に所属している秋山時貞県議(共産)は「ゲーム障害だとかネットゲーム依存の問題が社会問題になっているというのは当然ある」としつつも、スマートフォンなどの使用に時間制限を課す条例案のあり方について「かなり個人の領域に踏み込んだものなので慎重であるべき」「条例に適さないのではないか」と指摘。また、秋山県議は条例案に保護者が第一義的に責任を負うと記されていることに関し、「条例に書き込むものではないかな」との見解を示した。その上で秋山県議は検討委員会の中でも「今のままでは賛成できない」ということを述べていることを明かした。

大山委員長「親権や子どもの人権を侵害したりするものではない」
 県議会事務局の長尾氏は本紙の取材にメールで応じ、検討委員会の大山一郎委員長が20日に条例案について次のように説明したことを明かした。
「現在検討を進めている条例は、ネット・ゲーム依存症対策の推進について基本理念を定め、県、学校等、保護者等の責務等を明らかにするとともに、ネット・ゲーム依存症対策に関する施策の基本となる事項を定めることによって、ネット・ゲーム依存症対策を総合的かつ計画的に推進することを目的としたものであり、決して、インターネットやゲーム全てを否定したり、親権や子どもの人権を侵害したりしようとするものではない。」

検討委議事録は「公文書として存在しない」
 また、条例案の検討委員会は非公開で行われ、公表できる議事録が存在しないのだという。県議会事務局の担当者は本紙の取材に対し、次の通り答えている。
ーー香川県議会ネット・ゲーム依存症対策に関する条例検討委員会に関し、これまでの議事録などはございますか?
県議会事務局「こちらは公表できる議事録を作成していない」
ーーそれは公文書として作成していない、存在しないということですか?
県議会事務局「そういうこと」
ーー会議自体は開かれているけど議事録を作っていないということなんですね?
県議会事務局「はい、そうです」
ーーそういうのは議会の運営の在り方としてちょっと如何なものかというように思うんですけれども、香川県議会としてはそういう運営でやってらっしゃるということですね?
県議会事務局「はい」
ーーそれは、議会の運営の条例とかあるじゃないですか。規則というか、議事運営に際して。そういうものに違反しないんですか?
県議会事務局「そのあたりの話になるとお答えしかねる。」
 仮にも「議会」であるならば秘密会であったとしても議事録は作成すべきであり、それをそもそも「公文書として存在しない」などと言い切れる香川県議会の議事運営の在り方は大いに問題ではなかろうか。

 県議会は条例案へのパブリックコメントを23日から2月6日までの間募集している。県議会ホームページによると、パブリックコメントは香川県民か条例案第11条に規定する事業者のみが意見を提出することができることとなっており、郵送・持参・FAX・メールでの提出を受け付けるという。

   ちなみに県議会事務局には19日17時時点で112件のメールが届いており、それぞれ内訳は賛成3件、反対79件、その他30件と圧倒的に反対意見が多いそうだ。

萩生田文科相「コメントするのは控えたい」
 萩生田光一文部科学大臣は、17日の会見で条例案について問われ、地方自治体の動きであることを理由に「是非を私がコメントするのは控えたい」「香川県が独自に考えていただいたらよろしいんじゃないか」との見解を示した。一方で文部科学省としてもネット・ゲーム依存に対する取り組みの必要性を指摘した。

(平松けんじ)
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