Reported by 平松けんじ
 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、次々と学校行事が中止となっている。相模原市では3月に今年秋までの修学旅行の延期を決めていたものの、学校再開が6月までずれこんだことから学習時間の確保を優先し、3日に開かれた市立中学校長の会合で修学旅行の中止を決めた。また、世田谷区では現状安全に修学旅行を行うことが難しいとの理由から修学旅行の一律中止の方向で調整を進めている。


 文部科学省は修学旅行を最初から中止と決めるのではなく、延期する形で何とか実現をしてほしいという考えだが、現場の教育委員会・学校ではそうもいかないようだ。

 相模原市教育委員会学校教育課の担当者は中止の理由として次の3つを挙げた。
①新年度に向けた生徒の学習の保障が必要。授業時数の確保。
②あくまで校外学習の一つであるため事前学習が必要だが、その時間の確保が休校で難しかったこと。
③さらに延期した場合、進路などの日程等で代替日の確保が難しいこと。
 世田谷区教育委員会の毛利元一教育指導課長は「区としては現状なかなか安全性をとるのが難しい」と理由を説明。現在も校長会などと修学旅行中止の方向で調整を進めている。毛利氏は「実施しようとしたときにこんな対策しますよっていうのが出せないんですよね。そこがすごく問題。実は国にも要望してるんですけど出してもらえてないところが一番苦しいところ。」と述べ、国から修学旅行の実施のための基準が示されていないことで「すごく困っている」と話す。

 文部科学省児童生徒課によると、修学旅行に関して特にガイドラインは示していないという。児童生徒課の担当者は「地域差もあることから特に定める必要性は感じていない」と話す。萩生田光一文科相は、16日の会見で本紙記者の質問に対し、6月3日付で日本旅行業協会が作成した「新型コロナウイルス対応ガイドラインに基づく国内修学旅行の手引き」を各都道府県教育委員会に情報提供したところだと回答。その上で萩生田文科相は「観光庁と一緒になったガイドラインで十分理解いただけると思いますけど、さらに不安があれば各自治体に寄り添っていきたい」と述べ、現在の対応で不安感を持つ自治体に寄り添った対応を行う考えを示した。

文科相「3月31日発でも良いから」努力促す

会見する萩生田文科相(16日 文科省Youtubeチャンネル)
 萩生田文科相はこれまでも文化祭・体育祭や修学旅行などの行事も「学び」として重要だとの考えを繰り返し示している。萩生田文科相は16日の会見でも「どうしても秋にできないということであれば一つの極論として、3月31日まででも良いし、3月31日出発でも良いから、そういう機会(=修学旅行)を、あらかじめやめるってことじゃなくて、何とかできないかってことを学校現場に努力をしていただきたいというメッセージとしてお話しさせていただいた」と述べ、引き続き学校側に努力を促した。

 しかし世田谷区教委の毛利元一教育指導課長は、15日、本紙の取材に対し、「(生徒は)3月31日までは学校に所属にはなってますけれども、実際問題、学校としてそういうのってなかなか難しいだろうな」と困難だという見方を示している。毛利氏は「物理的な問題」として5月・6月・9月・10月に行われることが多い世田谷区立中学校の修学旅行が、3月の卒業後に延期された場合、物理的に場所や日程が確保できるのかという点を指摘したほか、進学先が決まっていない子どもたちへの支援が必要な時期に修学旅行を設定できるのかという疑問を呈した。

 この点について萩生田文科相は16日の会見で、「逆に(自治体側から国に)相談してもらって、国の研修施設や宿泊施設を代替宿泊施設として使って、ぜひやることを前提に各自治体頑張ってほしい」と述べ、何とか修学旅行の実現を図ってほしい考えを示した。

代替行事の検討も
 修学旅行の中止が決まった自治体の一部では代替行事の検討も視野に入れている。相模原市教育委員会の篠原真学校教育課長は一例として「県立高校の入試が行われる2月15日ごろから合格発表が行われる時期に校外学習とか思い出作りの旅行とかも良いのかな」と述べ、日帰りの校外学習などの検討を進める考えを示している。

 一方で、教育委員会のガイドライン(先月28日付)で12月まで文化祭・体育祭や宿泊行事などの中止が決められた東京都立学校の一部では本年度中の代替行事は計画されていないようだ。都立新宿山吹高校では2年に1回行われる希望者参加型の修学旅行が今年は中止になったものの、学校側は卒業後の生徒の参加は都から補助金が出ないことや、制度上認められないとして困難だとしている。
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