平松けんじ
全国各地の学校で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「クラスター」発生が相次いでいる。
島根県松江市の立正大学淞南高校では、19日までに98人の感染が確認された。松江市は同校での感染を「クラスター」と認定。同校では5日にサッカー部の生徒が発熱し、8日にPCR検査で陽性反応が出た。同校では多くの生徒が寮生活をしていて、5日に発熱したサッカー部の生徒は2人部屋(8畳)で生活していた。生徒が発熱した後、学校側は同室の生徒を別の部屋に移したという。
学校側は生徒に対して手洗いうがいや共用部分の消毒などの感染症対策や、食堂などで大人数で集まったり、対面で食事することがないように求めていたというが、「人数も多いのでどうしてもキャパシティーのこともありますから、一般家庭のようには当然いかなかった」(教頭)という。
また、同校のブログに掲載されていた写真ではマスクをしていない生徒同士が抱き合うような様子が映されていた。教頭はこの写真を掲載したことを事実と認め、「(マスクを)つけろと言っておけばよかったなぁ」と反省の弁を述べた。
教頭によると、野球部の甲子園に代わる大会で決勝戦が終わった後、部員たちを他の生徒が迎え、健闘を讃えていたのだという。教頭は生徒たちがマスクを外していたことについて、熱中症対策として「密」を避けられるのであればマスクを外しても良いという厚生労働省の考えに従ったと釈明。生徒たちがマスクをせずに抱擁しあう様子を見て、その場にいた教頭は「うーんというのはあったんですけど、(マスクを)つけろと言わなかった」という。
このほか神奈川県厚木市では14日までに市立依知南小学校で教員5人と児童11人の感染が判明。市教委は、同校の全児童に対して17日以降PCR検査を順次実施することを発表した。沖縄県浦添市では市立小学校の教員3人、児童9人の感染が判明し、県がクラスターと認定した。
相次ぐ学校クラスター。寮生活をしている部活動を中心に発生しているようにも見受けられる。今回100人近い大規模クラスターとなった立正大学淞南高校。教頭の発言からは学校側の危機感の無さを強く感じた。食堂での混雑についても「指導不足だった」としつつも「人数も多いので」と釈明したり、マスクをつけずに抱擁する生徒たちを目の前に疑問を持ちながら止めなかった点など、学校側の危機管理がおざなりになっていたのではないかとの疑問を生じさせる。
萩生田光一文科相は、5月1日の会見で仮の話としつつも「学校でクラスター化があるのだとすれば学校再開するということは全国的に難しくなってくる」と指摘している。緊急事態宣言解除以降、学校は徐々に再開し、大半の学校で通常通りの登校が実施されているが、学校でのクラスターが相次ぎ発生しつつある以上、文科省としても何らかの対策を講じるべきであろう。現場に丸投げする文科省も、例年をなるべく踏襲したい学校も「生徒第一」の考えが抜け落ちていないか。生徒の健康・安全を第一に据えつつ、学びの保障をどう実現していくか、大人たちが一丸となって考えていかなければならない。
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