平松けんじ


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が連日増えている。東京都や大阪府では11月に入り感染者数が増加。東京都では12月5日に過去最多の584人の感染が明らかになったほか、大阪府でも11月22日に490人の感染が判明。累計の陽性者数は東京都が44003人(うち517人死亡)、大阪府が22735人(うち362人死亡)となっている。国内の累計の陽性者数は16万2067人(うち2335人死亡)に達した(12月7日現在=厚生労働省発表)。



 文科省の調べによると、全国的に学校が本格的に再開し始めた6月1日から11月25日までの間、児童生徒3303人、教員471人、幼稚園関係者206人の感染の報告があったという。同一の学校で複数の感染者が確認された事例では、学校内感染と感染経路不明を含めた件数が262件となり、このうち5人以上の感染者が確認された事例が61件となっている。埼玉県川越市では中学校で35人のクラスターが発生したと報じられるなど、学校での感染リスクへの不安の声が聞かれる。

 

 文科省は、「現在、国内の感染者数の増加に伴い、10月下旬から学校関係の感染者数が増加している」としつつも、「感染事例の大半が学校内で感染者1人にとどまっている」「学校内での感染の拡大があった場合でも、地域での感染拡大につながった事例は現在まで確認されていない」と指摘。小学生の73%(1252人中916人)が「家庭内感染」である一方で、高校生は「感染経路不明」が35%(1224人中431人)と最多を占めている。


マニュアル改定で「地域一斉の臨時休校避けるべき」

 こうした中、文科省は、12月3日、衛生管理マニュアルを改定した(Ver.5)。小中学校での地域一斉の臨時休校を「地域で感染経路の不明な感染者が増加しているなど、警戒度を上げなければならない場合であっても基本的に避けるべき」と明記。理由として▽小中学校では家庭内感染が大部分であること、▽学びの保障や心身への影響、を挙げた。また、これまでのマニュアル(Ver.4=2020年9月3日付)で示していた「感染者が発生したらまず臨時休校する」対応を見直し、直ちに臨時休校するのではなく、保健所と相談して真に必要な場合に限って行うこととした。


 持病を持っているなど感染への不安を感じている児童生徒を持つ保護者などからは「自主休校」や「登校選択制」を求める声も上がり始めている。台東区では10月2日に保護者が自主休校者への相談機関設立を求める陳情を提出し、区議会で趣旨採択された。同区では「自主休校」の子どもを長期欠席者対象の学級「あしたば学級」で受け入れるなど対応が進んでいる。また、寝屋川市では「登校選択制」を導入し、登校と自宅学習を選択することができる。希望する生徒に対してはオンラインのライブ配信で授業が視聴できる環境が整備されている。


 12月3日付の衛生管理マニュアル(Ver.5)では、学校側にまず保護者から児童生徒を欠席させたい理由をよく聞き取って、学校での感染症対策を十分説明し、学校運営方針について理解を得るよう努めることを求めている。そのうえで「感染の可能性が高まっていると保護者が考えるに合理的な理由がある」と校長が判断したときは、欠席としないなどの柔軟な取扱いも可能としている。


文科相 原則対面強調も自治体の取り組みに理解


萩生田光一文科相(8日午前 東京・霞が関の文部科学省内=平松けんじ撮影)

 8日の閣議後記者会見で、本紙記者に登校選択制について問われた萩生田光一文科相は、「義務教育は原則対面・登校ということが望ましい」と強調し、「文科省として一律に(登校)選択制で良いですよと言うと間違ったメッセージになる」と慎重な考えを示した。一方で萩生田氏は「感染状況は地域によって異なるので設置者の判断で柔軟に対応することはそれぞれの責任で(やれば)よろしいと私も思う」と自治体単位での取り組みに理解を示した。


本紙記者と大臣の質疑応答

The InterSchool Journal(平松けんじ記者):

ここのところ、第3波ということで感染者増えています。10月2日に台東区議会で感染への不安から学校を自主的に休校する、お休みするということを選んだ家庭への相談機関設立求める陳情が趣旨採択されました。台東区では生活指導相談学級というもので自主休校者の受け入れをしているほか、寝屋川市では不安な家庭、感染の観点から不安な家庭には「登校選択制」ということで自宅でのオンライン授業を選べるとのことですが、国として今後こういった自主休校ですとか、登校選択制に関して何らかの取り組みをされる考えはありますでしょうか。大臣のお考えお聞かせください。


萩生田光一文部科学大臣

義務教育は原則対面・登校ということが望ましいと思いますが、感染状況、地域によって異なりますので、設置者の判断で柔軟にそういう対応することはそれぞれの責任でよろしいと私も思います。台東区の服部区長は例えば持病をお持ちのお子さんなどで少し心配でですね、この際本当は学校に行きたいんだけど、しばらくの間オンライン授業許してもらいたいという陳情を受けてそのような対応をしたと聞いてますし、福岡の高島市長などはやっぱりあのこの際三月までの間はですね、ご家庭の事情やお子さんの健康状況によって登校が心配だというお子さんに関してはそういった判断をしたとしても休校扱いしないということをそれぞれ設置者の判断で決めておりますので、私はそういう柔軟な対応でよろしいかと思います。文科省として一律にですね、選択制で良いですよと言うと、これもまた間違ったメッセージになると思いますので、基本的には冒頭申し上げた通り登校していただいて対面が原則なんですけれども、それぞれ地域やお子さんの健康状態もあるでしょうから、そこは柔軟な対応を設置者のほうで判断いただきたいと思ってます。


*2020年12月11日 埋め込み動画をISJ撮影動画に変更しました。

*2020年12月16日 埋め込み動画をISJ撮影動画(編集済み)に差し替えました。

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