平松けんじ 石川遥樹
川崎市旗(平松けんじ撮影)
川崎市立の小学校34校で体育の授業の際に体育着の下に肌着を着ないよう求める指導が行われていることがわかった。
発端は川崎市議会での山田えり市議(自民党)の質問。山田市議は「先日、小学生のお子さんの保護者から『体操服の下の肌着着用を禁止されている』と相談を受けた。大変驚いた。小学生という時期は性意識が芽生えだす非常に重要なタイミングだ。その性意識をしっかり育てるべき時期にも関わらず、それに逆行するような指導、間違っていると言わざるを得ない。」と厳しく批判した。
答弁に立った市教育委員会の教育次長は事実関係を認め、「運動後の汗等によって身体を冷やさない等の児童の健康面や衛生管理面の配慮」だと説明した。
市立小34校で「肌着着ない」指導 市教委調査結果
山田市議の指摘を受け、市教育委員会が全ての市立小学校を対象に調査したところ、市立小学校34校で低学年を対象に「体操服の下に肌着を着用しないよう声かけ等の指導を行っていた」(=市教委・3月22日付声明)ことがわかった。
市教育委員会は3月22日付でホームページに声明を出し、「季節や児童の状況に応じて弾力的な運用を行っておりまして、肌着の着用禁止や強制的な指導などは行っていないことにつきましてもあわせて確認した」と釈明。その上で「『肌着の着用を禁止している』などと児童や保護者の皆様に心配や誤解などを抱かせないよう、児童の気持ちに十分配慮した指導を行う」「着替え用の肌着等の準備や速乾性の肌着の着用を推奨する等の柔軟な指導に努める」として、各学校に「肌着」指導の見直しを求めたことを明らかにした。
市教育委員会健康教育課の日笠健二課長は、ISJの取材に対し、「学校はそんなに強い指導という意識はない。誤解という意識だ。」と釈明した。一方で日笠氏は「先生が子どもたちに肌着脱いでねというのは子どもから見たら肌着着たらだめだと受け止められる」部分があったことを認めた。
保護者に知らせず指導 批判の声高まる
ISJは指導の実態について、市立小学校に子どもを通わせている保護者などに話を聞いた。
小4女児の保護者は「小1・2・3年は(肌着着用が)禁止」だと明かす。学校側は保護者に対し「体育の授業で汗をかいたあと、そのままですと風邪をひくため肌着を脱ぐ」と説明していて、実際に小1のときに担任の女性教師から肌着を脱がせる指導を受けたという。その後、2・3年生になってからも女児は「(肌着を)脱がないと風邪をひく」の一点張りで教師の指導を守っていたという。
また、小6男児の保護者は「残念なことに子どもの学校でも指導があった。息子なのであまり気にしていませんでした。 低学年の時に指導されたことをずっと守っていたそうで、中学年、高学年では指導された記憶はないと言っている。」と話す。
一方でこのルールがいつ定められたのか考えるヒントとなった情報もあった。小学生の妹がいる女子大学生によると、自身が在学中の2007年~2012年には「肌着着用禁止」のルールはなく、「2014年くらいから3年ほどで出来たルールのようです」という。この点について市教委の日笠健康教育課長は「いつとかきっかけとかはわからない。少なくともここ2,3年の話ではない」とした上で「ルールとかそういうがっちりしたものではないので、学校に記録がない。」と説明している。
いずれのケースも学校側から保護者に何らかの説明はなされておらず、一連の報道で初めて知ったという保護者の方が多かった。保護者からは、
「学校の理不尽な校則に非常に驚いています。 肌着・下着のようなプライベートなものを他人に着ろだの着るなだの、 小さい頃から他人に指図されるのは子どもの人権侵害。」(小4女子保護者)
「体操着の下に肌着を着るか着ないかは学校がいちいち指導するような事ではないと思います。」(小6男子保護者)
という風に疑問や批判の声が相次いで上がった。
スポーツ庁も点検・見直し求める
この「肌着着用禁止」指導は、16日の参議院文教科学委員会でも取り上げられ、国も動いた。スポーツ庁は、3月18日、全国の教育委員会に対して点検・見直しを求める事務連絡を出した。スポーツ庁学校体育室の担当者は、ISJの取材に対し、「長年の慣習にとらわれていたことからそのような決まりが続いていて、それが学校のほうで再点検されないままに続いているのであれば、点検を行って、適切でないと判断されるのであれば必要な見直しをお願いしたい。」と話し、見直しを求めた。
性犯罪的「指導」で子どもを傷つけるな
「肌着着用禁止」は、特に発達の早い子からしたら教師の権威と権力による公開セクハラを受けているのと同義だ。日本テレビの情報番組「スッキリ」では「男性教師が女子児童の胸の成長を確認して、肌着着用を認める」というような報道がなされた。はっきり言ってセクハラだ。一般の公道上でやったら間違いなく犯罪になるだろう。このようなことが「指導」「教育」の名の下にまかり通っている現状は極めて異常だ。下着の色を指定し、確認するとか、髪型を制限するとか、昨今、教師が「指導」の名の下に生徒に対して人権侵害をやりたい放題やっている現状は全く看過できない。“教師ムラ”の人権意識の無さには毎度毎度驚愕させられる。教師への人権教育を行うことが喫緊の課題と言えよう。“教師ムラ”の勘違い住人たちは速やかに駆逐されなければならない。
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