平松けんじ
児童生徒がオリンピック・パラリンピックを観戦する「学校連携観戦」について神奈川県、埼玉県、千葉県などで複数の自治体がキャンセルの意向を示している。東京都でも22日、目黒区が中止を決定するなど、キャンセルする自治体が相次いでいる。
中井町教委「電車使用、変異株拡大で感染リスク高い」
組織委員会(会長・橋本聖子参議院議員)は、5月末に各自治体に学校連携観戦のキャンセル受付を6月23日まで受け付けることを文書で通知している。キャンセルに踏み切った各県の動きはこれに呼応したものだ。いち早く中止を表明した神奈川県中井町教育委員会は、ISJの取材に対し、「電車を使用する際に感染リスクが高いのではなかろうかというのが1点ある。変異ウイルスも拡大していますし、そこらへんの感染リスクが高まっている。」と理由を説明した。また、さいたま市教育委員会は「さまざまなことが不確定なため」と説明した。
このほか、東京都でも22日に目黒区教育委員会が中止を決定した。区教委は区議会文教委員会に提出した文書の中で「東京都教育委員会が指定する公共交通機関の利用による観戦は、新型コロナウイルス感染症や熱中症への不安がぬぐえない」と理由を説明している。しかし東京都はあくまでオリパラ観戦を実施する構えを崩していない。都教育委員会は「現状では実施する方針で準備している」(指導企画課)としている。都では区市町村立小中学校、都立高校・特別支援学校の児童生徒を「教育活動の一環として」オリパラ観戦に引率することとしており、事実上児童生徒・保護者に拒否権はない(=拒否すれば欠席扱い)。先に述べた神奈川県中井町が「教育活動の一環ではなくて、希望制」としているのと実に対照的だ。
都から「キャンセル」案内の通知を区へ送付せず
足立・品川両区の教育委員会は、ISJに対し、都から通知を受け取っていないことを認めたうえで、「(都から)通知が来たらそこで判断をするが、来ない間は行くのを前提に準備をしておかないと、フタ開けていきますよというときに行けませんというのが一番いけないこと」(足立区教委)、「(キャンセル期限に)間に合う間に合わないではなく、準備を進めているという状況」(品川区教委)として、あくまで「やる前提」で準備を進めているという。足立区教委は都から通知が来てないため、学校現場に伝えられていないことを認めている。
都教育委員会は組織委員会が試合会場で観戦できる観客の上限数を決めてからチケットを公費で購入する方針で、観客の上限数が決まるまでは意向調査も行わない方針だ。
これでは区市町村教育委員会や現場の学校長が判断する権利を奪っていることにならないか。都教育委員会は「そんなことはない。当日でもいつでも希望に応じて(観戦チケットの)配券をしていくということになるので、観客の上限数が設定されたら再度意向調査をする予定でいる。(略)配券をした後でも当日かなり暑い日が続くとか、または新型コロナウイルスの感染症の感染が非常に広がってきたというような場合になって安全安心な競技観戦ができないというふうに校長先生が判断すれば当日であっても取りやめるということを受け付けてく」(指導企画課)と説明した。
また、キャンセル受付期限を記載した文書を区市町村に送らなかったことについて、都教育委員会は「近隣の県や被災3県については6月23日というようなスケジュールで(キャンセルを受け付けている)ということになっていることは承知はしているが、東京都は別のスケジュールで今後調整をしていくということになっている」と述べ、あくまで他県とは事情が異なることを明らかにした。
小池知事「課題検討」とあいまい回答に終始
都政の責任者である小池百合子知事はどう考えているのか。18日の定例会見でISJ記者が「感染への不安、熱中症への不安がある中、授業名目でそれを押し付けるような学校連携観戦の在り方について、知事としてどう考えているか」と質問したが、小池知事は「今ご質問の中にいろいろ課題をすでに述べておられます。それらの課題を検討しながら判断していきたい。」と述べ、明確な回答をしなかった。(映像・文字起こしはこちらから)
観客上限「1万人」も学校連携観戦は「別枠扱い」
21日、組織委員会、国、都、IOC、IPCの代表者で開いた「五者協議」で東京オリンピック・パラリンピックの試合会場の観客上限を1万人とすることが決まったが、この学校連携観戦は「児童生徒・引率者は会場の行き帰りも含めて行動管理がなされ、人流への影響がないと考えられることから、別途の扱いとすることが確認された」(丸川珠代五輪相)という。しかし都教育委員会は最寄り駅まで児童生徒が一般客と同じように電車などの公共交通機関を使うことを認めているが、どのような行動管理を行うつもりか。極めて心配だ。
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