国会議事堂外観_220325_玉井殿内撮影
国会議事堂(東京・千代田区=2022年3月25日、玉井殿内撮影)
 明日7月10日に投開票を迎える第26回参議院議員通常選挙。選挙では子ども・教育政策は重要な分野の一つだ。昨年の衆議院議員選挙では、ブラック校則やコロナ対策が重要な争点となったが、今回はどうだろうか。ISJでは、前回も各党の子ども・教育政策について取り上げたが、今回も特集してみた。ぜひ投票の参考にしていただきたい。


9党いずれも授業料減免と貧困家庭支援を重視

 今回の参院選で9党いずれ党も重要な公約としているのが、授業料の減免・無償化政策だ。しかしその程度は政党によってまちまちであり、与党は控えめな減免・支援策に記載を留める一方、野党は軒並み教育の無償化を訴えている=図1=。
(図1)各党の授業料などの無償化・減免政策(各党政策集よりISJ作成)
各党の公約 授業料減免

 注目すべきは、給食費や教材費の無償化政策だ。義務教育である小中学校も教科書ワークなどの副教材代を徴収されるなど、実はタダではない。実際、経済的に余裕のない家庭では重い負担となる。

 給食の無償化は、立憲、維新、国民、共産の各党が訴えている。実際に維新が市政を担っている大阪市では、2019年度末から学校給食費の無償化の検討を始め、2020年度以降、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急措置として、全児童生徒の給食費を無償化した。さらに、維新、国民、共産の各党は、教材費や学用品費などの無償化も訴えている。

 また、授業料無償化については、与党・自民党は、大学などの授業料免除を充実させるとしているが、野党の大半は大学の授業料無償化を訴えている。立憲、国民、れいわ、社民の各党は大学の無償化を公約に明記している(立憲は国公立大学のみ無償化)ほか、共産は、大学・専門学校の入学金廃止と学費の半減を訴えている。なお、れいわは大学院までの無償化を掲げている。

 さらに立憲・国民・れいわ・社民の各党は、高校の無償化も掲げている。立憲は高校の授業料無償化の所得制限撤廃を掲げている。立憲の前身ともいえる民主党が政権を担っていた2009年~2012年、公立高校の授業料は所得にかかわらず無償化された。立憲の政策は、現在の所得制限付きの就学支援金制度ではなく、こうした民主党政権時代の取り組みに戻そうという発想だ。
(図2)貧困家庭への支援政策(同)
各党の公約 貧困家庭支援
 次に貧困家庭への支援だ。際立つのが児童手当の拡充だ。立憲は、児童手当を19歳までとし、子ども1人あたり月1万円を加算。ふたり親低所得世帯にも月額1万円を支給する。国民・共産・NHK党は所得を問わず、児童手当(共産は「子ども手当」)を支給することを訴えている。

 経済的に苦しい大学生への支援政策では、国民とれいわが貸与型奨学金の返済減免を訴えているほか、共産は給付型奨学金の拡充を訴えている。このほか公明はライフイベントに応じて柔軟に奨学金の返還ができる制度へ拡充するとしている。

後を絶たない学校での「いじめ」 各党の対策は

 全国の学校で後を絶たない、学校での児童・生徒間のいじめ自殺。各党はどのように対策を取っていく考えなのか=図3=。
(図3)各党のいじめ対策(各党政策集よりISJが作成)
各党の公約 いじめ対策

 いじめ対策では、特に自民が強い対策を打ち出している。自民党は新たな懲戒処分制度の創設や、犯罪にあたる「いじめ」を警察に通報することを掲げている。実際、自民党の「学校現場のいじめ撲滅プロジェクトチーム」は、今年5月、加害児童生徒に学校の敷地への立ち入り禁止を命じる「分離措置」という新たな懲戒処分の創設を求める提言を取りまとめている。これまでの出席停止は、教育委員会に権限があり、十分な活用がなされなかったため、新たな分離措置は、校長に権限を与えることとしている。

 一方、共産は自民の掲げる懲戒強化の姿勢を「いじめを陰湿かつ深刻にするだけ」として批判している。共産は、「いじめ対応をぜったいに後回しにしない命最優先の原則の確立」としているが、具体的な施策の内容は、深刻なケースに対応できる全国的なセンターとして「いじめ防止センター」の設立することが記されているのみで、後は理念的な記述だ。「被害者の安全を確保し、加害者にはいじめをやめるまでしっかり対応する」とのことだが、具体的にどう対応するのか明らかではない。

 社民は、いじめを「重大な子どもの権利侵害」の一つとして、虐待や自殺の問題とともに「子どもコミッショナー制度創設」「全国の自治体における相談・救済機関の拡充」によって解決することを掲げた。

子どもの意見尊重とその方法は

 今月可決された、こども家庭庁設置法案とこども基本法案には、子どもの意見を尊重することが明記されている。子どもの意見の尊重を、各党はどう見ているだろうか?=図4=
(図4)子どもの意見表明・反映の方法(各党政策集よりISJが作成)
各党の公約 子どもの意見尊重
 自民党は保守派の反対の声が根強いのか具体的な政策は記されていないが、自民党政権下で現在進められている「生徒指導提要」改訂では、子どもの権利条約への理解や、校則の見直しプロセスへの児童生徒の参加・関与が明記される。

 公明は、「子どもの意見を政策に反映させるため、子どもの意見を継続的に聴くための仕組みづくりを進める」ことを掲げ、行政と子ども・若者の間を仲介する「ユースワーカー」の設置・普及に取り組むとしている。公明は意見表明が難しい子どもたちの意見や思いを反映できるよう専門家の支援を推進するともしていて、子どもが自分の意思・意見を政治に反映できるよう最大限尽力する姿勢を見せている。

 立憲は、校則にかかわる子どもの意見表明権の保障、ブラック校則見直しを掲げ、「ルールメイキングプロジェクト」の推進を通じて学校民主化を進める姿勢を示している。

 共産は、「子どもが安心して意見を述べられるよう、周囲のおとながそれを受け止める条件・環境を整備することも重要」とし、「子どもの意見表明や保護者とのコミュニケーションを大切にする学校の民主的運営を奨励」するとしている。ある都立高校では、立候補時に選挙公報の内容を改めるよう生徒指導部の教員から強い口調で指導された。実際の学校現場では、子どもが声を上げても高圧的に封殺される事例が後を絶たない。こうした点からも子どもたちが安心して声をあげられる環境は重要だ。さらに共産は、校則に関して、▽校則は各学校で子ども、教職員、保護者が話し合って決める、▽話し合いの共通の土台として憲法と子どもの権利条約をすえる、▽校則や生徒指導に関する国の指導行政に子どもの権利条約をすえる、との方針を明確に打ち出した。

 このほか立憲・国民両党は、若者の政治参加のハードルを引き下げる被選挙権の年齢引き下げを打ち出した。立憲案では衆議院議員・地方議員・市区町村長は18歳、参議院議員と知事は23歳、国民案では衆議院議員18歳、参議院議員20歳となっている。しかし選挙に出馬するためには供託金を用意しなければならない(市町村議なら30万円、都道府県議は60万円)など、明らかに若者にはハードルの高い条件が残っている。

明日は投票日。私たちの声を政治に届けよう。

 国会は法律を作る。法律は私たちを縛る。つまり私たち子ども・若者にとって選挙や政治は無関係なものではない。私たちの知らないところで勝手に老人たちに私たちのことを決めさせて良いのだろうか。国会議員を選ぶということは、私たちの権利、生活を守ること。そして私たちの生活をより良くすること。決して無関係ではいられないのだ。政治でも子どもの権利や意見表明にやっと目が向けられ始めた今、私たちが一票を投じることはとても重要だ。

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