13日の参院本会議で、侮辱罪を厳罰化する改正刑法が可決された。これにより、公然と他人を誹謗中傷した者を、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金に処することができるようになり、公訴時効も1年から3年に延長された。インターネット上における誹謗中傷も当然含まれるが、「公然と」という規定があるため、LINE等のマンツーマンでのやり取りにおける侮辱行為は罪には問われない。

 この法改正が決まるきっかけとなったのは、おととし5月に22歳の女子プロレスラーがインターネット上の誹謗中傷を苦に自死した事件だ。

 この事件を受け、高市早苗総務大臣(当時)は記者会見で「匿名で他人を誹謗中傷する行為は、人として卑怯で、許しがたい」「制度改正も含めた対応を、スピード感を持って行ってまいりたい」と述べ、その後自民党と公明党に「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム」が設置された。自民党のPTには亡くなったプロレスラーの母親も参加したという。

 そして今年に入り、第208回国会で「刑法等の一部を改正する法律案」が発議され、賛成多数で可決された。この法案には、自民党、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、有志の会が賛成した一方、野党共闘系の立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組は揃って反対した。

いじめや教師の「公開処刑」抑止力なるか

 誹謗中傷はもちろん、子どもに関係のない問題ではない。子どもの間でも、「いじめ」としてネットやSNSで、はたまた学校の中で大勢の前で他の子を誹謗中傷する事案が後を絶たない。町田市では小6の女児が、それを苦に自死してしまった。

野党からは「言論弾圧のおそれ」を批判する声も

 侮辱罪厳罰化をめぐっては、野党共闘系の勢力から言論弾圧を危惧する批判の声が上がっている。

 国会本会議で立憲・鎌田さゆり議員は、「言論の自由を、公務員、政治家に対する正当な批判を大きく萎縮させるものになる」「名誉毀損罪には公共の利害に関する場合に違法性が阻却される特例が明文で定められているのに、今回の侮辱罪にはそのような規定がない」と批判し、法改正に反対した。

 共産・本村伸子議員も同様に、「侮辱罪は自由民権運動の弾圧に用いられた」と述べたほか、北海道警による野次排除事件を例に挙げ、「権力者や政府の政策に対する批判、批評を侮辱と認定し、捜査当局が恣意的な判断をしないとなぜ言えるのでしょうか」と批判し、法改正に反対した。

 立憲民主党は法案の修正案として、施行3年後に有識者会議を開き、「インターネット上の誹謗中傷に適切に対処できているか」「表現の自由等に対する不当な制約になっていないか」を検証し、必要な措置を講じるという条文を提出した。これは賛成多数により可決され、改正条文に盛り込まれた。

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