平松けんじ
6月29日、泉大津市立誠風中学校の修学旅行で、指導の一環として男女の生徒2名をクーラーのついていない観光バスの中で2時間30分待機させ、女子生徒が体調不良になっていたことが、7月25日、わかった。
女子生徒は、前日夜、宿泊施設の自室を抜け出し、友人の生徒がいる部屋に朝方まで長時間滞在。他の客室への訪問を禁止する修学旅行のルールに違反したとされる。指導はこのルール違反を受けたもので、自由行動の間、神社の境内か観光バスの中で待機することを選択させた。

女子生徒は、最初30分程度神社の近くで待機していたが、暑さを感じてバスの中に移動。しかし「(当時バスが停車していた)駐車場はアイドリング(エンジンをかけたまま停止すること)が禁止されていたため、クーラーがついていなかった」(貸切バスを運行した近鉄バス担当者)。同日の岐阜県高山市の最高気温は35℃(気象庁)だった。

女子生徒は水分補給をすることもできず、帰宅後体調不良になったという。

同校の佐藤維教頭は、教員らが繰り返し車外への移動や水分補給を促したが、生徒が従わなかったと主張している。しかし女子生徒は「そのような発言はなかった」と真っ向から反論。

学校は当初、バス車内での待機時間を1時間40分と市教委に報告しており、ISJが取材を続ける中、結局2時間半に回答を修正するなど、事態を矮小化している疑いが拭えない。

「体罰に相当する事実」も府に報告せず
保護者からの抗議を受け、校長が、7月20日の全校集会で経緯を説明し、謝罪した。佐藤教頭は、ISJの取材に対し、「体罰に相当する事実」だとしたうえで、「熱中症の視点が薄かった」と反省の弁を述べた。

学校を所管する泉大津市教育委員会は、「体罰ととらえられても仕方がない」(臼井幸江・指導課長)として「安全配慮を欠いている」と校長を指導。しかし市教委は「府に判断を仰がなければいけないようなものとは考えられない。市で対応できるもの。」(同)として教員の人事権を持つ大阪府教育委員会に報告をしない意向を示している。
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会見する末松信介文科相(7月26日、文科省内=平松けんじ撮影)
6月以降、運動会などで熱中症を理由に搬送される児童生徒が相次いだことから、文部科学省は、繰り返し熱中症への警戒を呼び掛けている。こうした中、誠風中学校で起こった出来事に大臣も憤りをあらわにした。

末松信介文科相は、7月26日、記者会見でISJの質問に答え、「考えられない。やっちゃいかんことだと思う。まず生徒の健康ということを考えなければならないと思う。」と学校の対応を厳しく批判した。

学校は、指導の意図について、「事前に生徒・保護者に対してルールを守ってみんなで楽しくやろうと重ね重ね積み重ねてきたものですから、やはりそこについては当人たちにもわかってもらいたいという学年の思いがあった。ルールを破ったことへの反省はあってほしい。」(佐藤教頭)と述べたが、生徒の命を危険にさらしてまで行う「教育的指導」と何なのか。教育と虐待をはき違えていると言わざるを得ない。(平松けんじ)

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